市村産業賞

第43回 市村産業賞 貢献賞 -04

圧電薄膜の開発と角速度センサの実用化

技術開発者

パナソニック株式会社 先端技術研究所 ナノプロセス技術グループ
グループマネージャー 藤井 映志

技術開発者 パナソニックエレクトロニックデバイス株式会社 開発本部
材料デバイス開発センター チームリーダー 小牧 一樹
技術開発者 パナソニックエレクトロニックデバイス株式会社
回路部品ビジネスユニット 参事 山本 幸二

開発業績の概要

 近年、カーナビゲーションシステム、車両制御やデジタルスチルカメラの手振れ補正などに用いられる角速度センサの高性能・小型化への要望が高まっていた。しかしながら、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの焼結体や水晶などの単結晶の圧電材料を音叉形状に加工した従来の角速度センサでは、圧電性能や加工精度に限界があり、高性能・小型化の実現は困難であった。
 受賞者らは、安価で加工性の良いSiを音叉形状に加工して構造体に用い、その上に高性能なPZT圧電薄膜を形成した構造のSi音叉型角速度センサを開発し、高性能・小型化を実現した(図1)。その過程で開発したキー技術は、(1) Si基板上への高性能なPZT圧電薄膜の作製技術および量産化技術(図2)、(2) Siディープエッチングによる高精度なSi音叉加工技術(図3)、(3) 新規なセンサ構造(駆動・検出電極を圧電薄膜上の同一平面に形成)と角速度の検出技術、である。特に、Si基板上へのPZT圧電薄膜作製技術では、従来MgO単結晶基板上にしか実現できなかった分極軸が一方向に揃ったPZT圧電薄膜を、量産性に優れたスパッタ法を用いてSi基板上に実現した。その圧電性能は、従来の焼結体材料と比較して、約1.5倍の圧電定数、約3倍の電気機械結合係数が得られている。
 これらの開発技術の導入により、角速度センサの高性能・小型化を実現し、2003年にカーナビゲーションシステム用として実用化した。2005年には車両安全制御用として、車の安全走行に不可欠なシステムにも用途展開し、事故率や死亡率の低減に大きく貢献してい る。また、更なる小型化と2軸検知を実現し、2006年にデジタルスチルカメラの手振れ補正用として実用化した。主要各社のデジタルスチルカメラに搭載され、利便性の向上に貢献している。
 今後、3軸検知のモーション用としてゲーム機や携帯電子機器、さらにはロボットへの展開など、多くの産業分野への貢献が期待できる。

図1
図2
図3