市村産業賞

第44回 市村産業賞 貢献賞 -01

1モーター 2クラッチ パラレルフルハイブリッドシステムの開発

技術開発者

日産自動車株式会社 パワートレイン開発本部
主管 早崎 康市

技術開発者

同社 同本部
主管 阿部 達夫

技術開発者

同社 同本部
主担 中条 桂介

推  薦 一般社団法人日本自動車工業会

開発業績の概要

 ハイブリッド車は環境技術として、小型車から高級車まで様々な車種が市場へ投入されている。現在主流の2モーターシリーズパラレル型は小型車では良燃費車として幅広く受け入れられているが、高級車では燃費改善効果が少ない特性とアクセル操作に対するダイレクト感の乏しい加速フィーリング、高コストから受け入れられたとは言い難い販売状況に留まっていた。
 本開発システムの1モーター2クラッチパラレル型は、乗用車用フルハイブリッドシステムとして最も軽量シンプルかつ燃費特性に優れ、特に大排気量エンジンとの組合せでその改善度は顕著である。更に効率を高める為、標準的な発進要素であるトルクコンバーターを廃止した乗用車世界初のシステムである(図1)。本システムは走行中のエンジン停止・始動、変速、発進をクラッチを介して頻繁に切り替えるため、従来技術ではスムースさを実現することが難しく、一般に商品化は困難と認識されてきた。本システムでは、モーターおよびクラッチ制御技術、ハイブリッド車向け高出力・高応答リチウムイオンバッテリーなど多岐に渡る独自技術開発で解決し、高速まで可能なモーター走行、3.5Lエンジンの高級車にも拘らず1.5Lクラス並み19km/Lの燃費性能と気持ちの良いドライビングフィールを実現した。また、 極めて高いEV(モーター)走行頻度も実現した(図2)。
 本システム搭載高級車(2010年11月販売開始)は、小型車並みの燃費性能と、V8車並みの加速感/運転性能により、同一車種内におけるハイブリッド比率は他社が10〜20%であるのに対し、約60%と群を抜き高い比率となっている。さらに昨今、欧州メーカーを中心に、本システムに補助的デバイスをつけて追従する動きがあることから、システム形 式として主流になりつつある。ハイブリッド車を含む電動車両の普及は,地球全体のCO2排出量削減に繋がるだけでなく,将来のスマートグリッドでの蓄電など,新たな社会インフラとしての機能も大いに期待される。

図1
図2