市村産業賞

第44回 市村産業賞 貢献賞 -02

回転連結鉄心を用いた高効率モータの開発と量産拡大

技術開発者

三菱電機株式会社 生産技術センター モータ製造技術推進部
次長 秋田 裕之

技術開発者 同社 静岡製作所 圧縮機製造部
グループマネージャー 及川 智明
技術開発者 同社 名古屋製作所 常熟プロジェクト
主席研究員 度会 明

開発業績の概要

 空調、輸送、産業など各分野で省エネと利便性、快適性向上を狙った動力の電動化が進んでおり、国内電力消費量の半分を消費するモータには効率向上と、高い制御性や低振動低騒音を満足するためのトルク脈動低減が求められる。モータの効率向上には、体格の増量や高級材料を用いる以外に、コイル密度向上によるコイル発熱の低減が有効である。高密度に巻線できる鉄心構造として分割鉄心が考案されたが、部品数が多く組立てコストが高くなることと、組立て誤差によるトルク脈動の発生が問題となった。高密度コイルと高精度鉄心はトレードオフの関係にあり、またコイルと鉄心の高い生産性を両立させることは困難であった。
 受賞者らは回転自在に連結された鉄心(図1)と展開した鉄心に巻線してから丸める工法(図2)を開発し、高速で高密度な巻線を連続的に実施することを可能とした。鉄心は連結された円形姿勢の状態でプレス加工により製造されるため真円度が高く、組立て誤差に起因するトルク脈動を抑制することができた。鉄心の回転軸は、円柱状の突起(図3)として金型内で塑性加工により形成されるので製造コストが安価となる。これらの高密度巻線と高精度鉄心加工により、素材を増量することなくモータの高効率化、低トルク脈動化、高生産性を実現した。
 本技術を用いたルームエアコン用圧縮機モータは、モータ効率96%を達成し、2000年の発売以来、重量当りのモータ効率で業界1位(世界)を継続中である。2011年までの累積生産台数は約1770万台に達し、その電力量削減効果は年間約2.2億kWhと試算される。また、エレベーター昇降路内への設置が可能な薄形巻上機に本技術を活用することで機械室が不要なエレベーターを実現し、駅のホームや小型マンションなどに適用されバリアフリー化に貢献している。産業分野では、本技術の活用によりサーボモータの小型高出力化を実現し、工場の省エネに貢献している。本技術は広い分野への適用が可能であり、今後、自動車分野をはじめさらなる高効率モータの開発と普及が期待される。


図1
図2
図3