市村産業賞

第44回 市村産業賞 貢献賞 -03

超並列計算機用6次元インターコネクトの開発

技術開発者

富士通株式会社 次世代テクニカルコンピューティング開発本部
システム開発統括部 安島 雄一郎

技術開発者 同社 同本部 LSI開発統括部
シニアマネージャー 高山 浩一郎
技術開発者 同社 同本部 ソフトウェア開発統括部
三浦 健一

開発業績の概要

 従来のスーパーコンピュータより1桁高い性能を実現するには、約10万個の高性能プロセッサを接続する前例のない規模の超並列計算機を開発する必要があった。1万ノード級の規模を実現する直接網インターコネクトの開発については米国が先行しており、我が国のスーパーコンピュータで使用されてきた間接網インターコネクトは千ノード規模が限界であった。従来の直接網インターコネクトの主流は3次元トーラス・ネットワークである。この3次元トーラスで10万ノード規模を実現するには、次元あたりプロセッサ数の増加による通信性能劣化、故障箇所の回避から生じる通信規則性破れによる通信性能劣化、さらに故障箇所でシステムが分断されることによる可用性低下が課題となっていた。
 受賞者らは、これらの課題を解決するため、トーラスの次元数を拡張した6次元メッシュ/トーラス・ネットワークトポロジーを構築するインターコネクト技術を開発した(図1)。本開発技術は、拡張した次元を利用した故障ノード回避通信機能、仮想3次元トーラス機能(図2)を利用した故障ノード迂回構築機能、10万ノード級の並列処理で問題となる同期処理を高速化する多段自動応答機能を備える。本開発技術により10万ノード級のスケーラビリティ、通信の規則性維持、および可用性の維持を実現した。
 本開発技術を搭載し、8万8128個のプロセッサを接続したスーパーコンピュータ「京」*は、圧倒的な世界最高速となる毎秒1京510兆回の演算性能を達成した。また、本開発技術は今後の超並列計算機における目標モデルになると見込まれ、超並列計算機の発展に貢献するとともに、「京」の実現による科学技術および経済の発展への寄与も期待されている。

* 「京」は理化学研究所が2010年7月に決定した「次世代スーパーコンピュータ」の愛称です。

図1
図2