市村産業賞

第44回 市村産業賞 貢献賞 -04

鋼構造物の環境負荷低減に貢献するLP鋼板製造技術の開発

技術開発者

JFEスチール株式会社 西日本製鉄所 倉敷地区 厚板部
室長 弓削 佳徳

技術開発者 同社 同所 福山地区 厚板部
主任部員 堀 紀文
技術開発者 同社 同所 倉敷地区 制御部
部長 岡村 勇
推薦 社団法人日本鉄鋼協会

開発業績の概要

  LP(Longitudinally Profiled)鋼板は、長手方向に多彩に板厚を変化させた高機能厚鋼板で(図1)、鋼構造物の重量低減や溶接等の板継ぎ箇所の削減を可能とすることが出来るため、造船分野および橋梁分野からその供給が強く望まれていた。しかし、LP鋼板は、熱間圧延で長手方向に板厚を変化させる特殊な圧延が必要で板厚精度や平坦度の確保が困難であること、水冷による材質造り込み時に長手方向の板厚差に起因して材質差が発生すること、製品切断前にオフラインで板厚を手測定して切出す位置を探し出す必要があることなど、品質面、生産性の面で課題が多く、安定して大量に製造する技術が確立されていなかった。
 受賞者らは、鋼構造部位の必要な設計板厚に応じた多彩な板厚プロフィールを有したLP鋼板を、高品質かつ高効率で製造する技術の確立を目指した。寸法を造り込む熱間圧延工程では、圧延機のロール開度を精度良くコントロールして長手方向に目標通りの板厚変化を付与する技術を開発した(図2)。水冷により材質を造り込む制御冷却工程では、長手方向の板厚差に起因した材質差を低減させるため長手方向に連続的な冷却時間差を生じさせる技術を開発した。熱間圧延後の鋼板から製品を切出す工程では、目標通りの板厚プロフィールの製品が得られるように切断ライン上で自動的に製品を切出す位置を見つけて切断する技術を開発した。
 本技術開発により、多彩に板厚を変化させた高品質のLP鋼板を月間1万トン以上製造出来るようになり、累計受注量は51万トンに達している。LP鋼板は、造船分野ではトランスバルクヘッド、アッパーデッキ、ボトムプレートなど(図3)、橋梁分野では中間支点上の桁フランジなどに適用されており、軽量化や溶接等による板継ぎ箇所の削減および板継ぎ部の板厚差解消を可能とし、鋼構造物の環境負荷低減、製造コスト削減に寄与する鋼板として社会に大きく貢献している。

図1
図2
図3