市村産業賞

第49回 市村産業賞 貢献賞 -02

高外観樹脂材料の開発と無塗装材着部品への適用

技術開発者 スズキ株式会社 要素技術開発部 第四課
係長 深見 優之助
技術開発者 同社 四輪ボディー設計部 第一設計課
福田 智子
技術開発者 同社 四輪内装設計部 内装設計課
チームリーダー 野末 将之
推  薦 一般社団法人 日本自動車工業会

開発業績の概要

 軽自動車の需要拡大を目指し、従来の車にない魅力を持つ新ジャンルの車が企画された。車には随所に人々が驚くほどの斬新な設計思想を盛り込む方針であった。内装部品を担当した受賞者らは、車の個性を際立たせる外観の実現を目標とした上で、ここで、環境負荷とコストを低減するとしてスズキが2001年より継続して取組んできた「材料着色(以下、材着)技術」を活かすことにこだわった。そこで材着技術が使えるベース材料の開発から取り組み、環境、産業の両面に有用な新材料の開発および自動車内装部品での実用化を目指した。
 2011年より進めた開発は、図1のとおり三世代の材料の進化と量産化を遂げた。自動車で世界初の実用化であるとともに、最終的には外観品質のみならず、自動車材料に要求される耐久性能や生産性のすべてを理想的なレベルで満たす世界で唯一無二の材料に完成させた。受賞者らは更に、新材料を用いて複雑な部品形状の成型でも高外観を安定的に実現する構造の設計技術を確立したうえ、スズキが蓄積してきた材着技術と鏡面加工を組み合わせ、実用化に導いた。
 最大の特長は、鮮やかで深みがあり艶高いオレンジ、赤、カーキなどの樹脂部品を、無塗装で塗装以上のクオリティで実現した点。従来、黒系が中心のインパネ回りに多彩な加飾スタイルを切り開いた意義は大きい。さらに無塗装化の効果として、塗料より排出される環境負荷物質のVOC(Volatile Organic Compounds)削減およびコスト低減にも寄与している。これらの成果は、スズキが目指す"Create a Wow!"のインパクトで商品力を大きく押し上げた。初採用となった2013年末発売のハスラー(図2)には爆発的な人気の他、2015年次RJCカーオブザイヤー最優秀賞をはじめ多くの受賞をもたらした。その後も採用拡大と産業界への波及が進んでいる。2017年2月末時点で、本技術を搭載したスズキの軽自動車の累計販売台数は36万台に至っている。


図1
図2