市村産業賞

第50回 市村産業賞 貢献賞 -02

民間航空エンジン ファン構造案内翼への複合材(FRP)適用

技術開発者 株式会社 IHI 航空・宇宙・防衛事業領域 民間エンジン事業部
事業部長 盛田 英夫

開発業績の概要

1.開発の背景
 航空エンジンに対する低燃費化の要求をより高いバイパス比(エンジン主流に比してバイパス側に流れる空気の比が大きい)設計の採用により実現するには、大きいファン径となってもファン部品重量の増加を抑える必要がある。そのためには重量あたりの強度・剛性に優れるFRP(Fiber Reinforced Plastics)の適用が望ましい。従来から多く採用されている熱硬化性樹脂FRPは、素材の冷凍保管や長い成形時間、エンジン翼部品のような量産品を製造するためには多くの生産設備が必要であり、設備投資や生産コストの増大を招くことが課題であった。また、熱硬化性樹脂FRPではファン部品に要求される耐衝撃性を満たすことも難しく、構造を支える部材への適用は困難であった。

2.開発技術の概要
 本開発技術では、比較的短時間での成形が可能で、かつ耐衝撃性に優れる熱可塑性樹脂FRP材による翼とウェッジ構造呼ぶ締結構造の採用により、ファン構造を支持しつつファン内の空気の流れを整える翼である「ファン構造案内翼」(SGV:Structural Guide Vane)を実現し、エアバスA320neo向けPW1100G-JMエンジンに搭載した(図1)。FRPを用いたSGVの実用化は世界初である。

3.開発技術の特徴と効果
・熱硬化性樹脂FRPでは実現できない耐衝撃性をもつ熱可塑性樹脂FRP素材(プリプレグ)(図2)を独自に開発し、国内製造技術を確立した。成形時間の短いプレス成形を実現した。国内企業を可能な限り活用するとともに、製造設備新設のみならず、生産拠点を整備し国内航空産業の発展にも貢献した。
・本技術開発による複合材料製SGVの実用化によって、当該航空エンジンの部品数削減・部品重量の削減に寄与し、エンジンとして従来エンジンより16%の燃費低減を達成した。


図1
図2