市村産業賞

第52回 市村産業賞 功績賞 -01

リチウムチタン酸化物負極を用いた大型二次電池の開発と実用化

技術開発者 株式会社 東芝 研究開発本部 研究開発センター
首席技監 高見 則雄
技術開発者 同社 同本部 同センター 機能材料ラボラトリー
室長 松野 真輔
技術開発者 同社 電池事業部 セル応用技術部
部長 稲垣 浩貴
推  薦 一般社団法人 電気通信協会

開発業績の概要

1.開発の背景
 地球環境、エネルギー・資源の問題解決の視点からエネルギーの有効利用とCO2排出削減が世界的規模で求められる中、自動車等のモビリティの電動化や再生エネルギー用の定置用蓄電システムに適合可能な大型二次電池の開発・実用化が進められている。このような大型二次電池に要求される性能として高出入力、急速充電、長寿命、高安全が重要な位置づけとなっているが、従来の民生用途の小型リチウムイオン電池では一般に黒鉛を負極に用いているため、これらの性能を同時に満たすことが困難であった。

2.開発技術の概要
 本技術は、従来のリチウムイオン電池の黒鉛負極に比べて化学的に安定で、充放電に伴う体積変化がほとんど無いリチウムチタン酸化物(LTO)に着目し、高品質なLTO微粒子を開発することによって低抵抗で長寿命な負極の実現に成功した(図1(a))。その結果、自動車や大型蓄電池システムに適合する高い性能と安全性を実現し2008年、世界で初めてLTO負極を用いた大型二次電池”SCiBTM”を製品化した(図1(b))。

3.開発技術の特徴と効果
 LTO粒子の電極反応機構を解明することによって電極の高性能化の指針を得るとともに、LTO特有の内部短絡に対する安全機構を発見することで高安全性を実現した。さらに、表面不純物を除去した高品質なLTO微粒子を用いることにより、低抵抗でサイクル性能に優れたLTO負極(図2)の開発に成功し、高出入力、急速充電、長寿命、高安全を兼ね備えた大型二次電池を実現した。現在、”SCiBTM”は電気自動車やマイルドハイブリッド車などエコカー、バス、鉄道車両(東京メトロ、次期新幹線N700Sなど)、定置用大型蓄電池システムなどに普及が拡大している。今後、持続可能な循環型社会の形成を目指すため、地球環境問題、エネルギー・資源問題の解決と安心、安全な社会の実現に貢献することが期待される。


図1

図2