市村産業賞

第52回 市村産業賞 貢献賞 -01

世界初、100%エンジンで発電し、100%モーターで走行するパワートレインの開発

技術開発者 日産自動車株式会社 パワートレイン・EV技術開発本部
パワートレイン・EVプロジェクト部
パワートレイン主管 仲田 直樹
技術開発者 同社 同本部 同部
パワートレイン主管 羽二生 倫之
技術開発者 同社 同本部 同部
主担 木村 誠
推  薦 一般社団法人 日本自動車工業会

開発業績の概要

1.開発の背景
 近年、環境問題を背景に自動車用パワートレインも電動化へのシフトが加速している。日産は多くのお客様に選んでもらえる電動パワートレイン技術として、100%モーター駆動の「e-POWER」を開発し、量販車であるノート、セレナに搭載した。

2.開発技術の概要
 「e-POWER」はハイブリッド車の歴史の中で最も古いとされるシリーズハイブリット方式を採用している。シリーズハイブリッド方式は、モーターとインバーターの効率とコストがボトルネックとなり、良燃費を訴求する量産モデルとしては技術的に実現困難と考えられてきた。そこで日産はすでに量産化している電気自動車(BEV)の制御技術と部品技術を活用することに加え、エンジンを発電に特化した仕様・セッティングとし、バッテリ容量・出力と発電制御の出力とタイミングを最適化した。更に無駄を徹底的に省くことで性能とコストを両立する形で世界で初めてシリーズハイブリッド方式を量産車として実用化した。

3. 開発技術の特徴と効果
 「e-POWER」はシンプルなシステム構成故に信頼性が高く、システムを構成するコンポーネントも従来品を用いているため、高い品質レベルを確保している。また、将来的にもBEV、内燃機関、それぞれの進化を容易に反映できるシステムであり、今後、拡大される自動運転との親和性も高い。
 また、運転フィーリングはBEVそのもので、従来の内燃機関車とは一線を画したレスポンスの良い運転フィールを提供できており、発売以来、燃費の良さに加えて、「運転して楽しい」との評価を多くのお客様から頂いている。2020年1月末時点でノート、セレナ合わせて35万台を超える「e-POWER」を販売し、CO2排出削減量は年間10万トン、ガソリン消費削減量は年間4.4万kLと環境問題へも大きく貢献した。

図1
図2   図3