市村地球環境産業賞

第51回 市村地球環境産業賞 貢献賞 -01

熱可塑性CFRP加熱工程の高速過熱水蒸気を用いた省エネへの取組み

事業経営者 トヨタ自動車株式会社 工程改善部
グループマネージャー 吉原 功
技術開発者 中部電力株式会社 技術開発本部 エネルギー応用研究所
研究主査 長 伸朗
技術開発者 株式会社 豊電子工業 技術開発部
課長 今村 幸伯
推  薦 一般社団法人 日本自動車工業会

開発業績の概要

1.開発の背景
 自動車産業におけるCO2削減の取り組みは地球環境への影響の大きさから非常に重要である。自動車のライフサイクルの中で、製造工程のCO2排出を低減する事は、世界的な生産台数から見てもその意義は大きい。車体軽量化により走行時のCO2削減に大きく貢献する熱可塑性CFRP(炭素繊維強化樹脂)は、その部品製造工程における加熱に多くのエネルギーを必要とする。本取組みでは、CFRP加熱工程の熱効率を上げ、製造工程のCO2排出量を大幅に低減する事を目的とした。

2.開発技術の概要
 熱可塑性CFRPは熱伝導率が金属の1/1000と非常に低く、加熱し難い材料である。加熱すると繊維が解放され熱伝導を阻害する空気層ができてしまう(図1)。従来の加熱で用いられていた遠赤外線加熱は輻射伝熱であり、材料表面からの熱が内部に伝熱しきるには、390秒の長い時間が必要であった。そこで対流伝熱と凝縮伝熱の2種の伝熱を持つ過熱水蒸気を加熱媒体とする工法・装置を開発した(図2)。噴射ノズルを介し400℃の過熱水蒸気をシート状の材料の表裏に高速噴射する。過熱水蒸気は噴射時に、断熱膨張し温度が大幅低下する問題があったが、これに対しノズル付近に電気ヒータ(ハイブリッド熱源)を配置し、過熱水蒸気を再加熱することでこの問題を解決した。また、噴射流が材料を包み込み、且つ表面に沿って流れるようにノズルに角度を付けて配列配置する工夫を行った。

3.開発技術の特徴と効果
 熱効率を上げ加熱時間を390→120秒に短縮し生産性が大幅に向上。部品製造時のCO2排出量を従来比70%削減を実現した。過熱水蒸気の雰囲気中は低酸素状態である為、物質の酸化劣化を防ぐ事ができる。汎用性が高い為、洗浄、乾燥等様々な加熱用途に転用ができる。

図1
図2