市村学術賞

第41回 市村学術賞 貢献賞 -02

LMP2の子宮平滑筋肉腫の鑑別マーカーと診断基準の確立

技術研究者

信州大学 大学院医学系研究科 免疫制御学
准教授 林 琢磨

推  薦 信州大学

研究業績の概要

 子宮平滑筋肉腫(LMS)は、リスクファクターが明らかでなく、既存の化学療法や放射線療法に対して抵抗性を示す予後不良の難治性腫瘍である。国内外の40歳以上の女性の約40%に発症する子宮平滑筋腫(LMA)は良性腫瘍であるが、LMSとの判別が極めて難しい。MRIやPET-CT等の画像診断では、LMSはLMAと区別しにくく、臨床検査におけるLMAとLMSの鑑別マーカーが同定されていない。その結果、術後の病理診断よりLMSと判明することは珍しくない。つまり、現行の鑑別診断は、経験と熟練を有する病理医の判断に委ねられ、客観性に欠けている。
 受賞者のグループは、利根川 進 教授(MIT)の研究協力のもとプロテアソーム構成因子LMP2欠損マウスのメスで、生後6ヵ月以降になるとLMSが自然発症(図1)し、生後12ヵ月までの罹患率は、全LMP2欠損マウスのメスの約37%になることを確認した。そこで、医療機関(注1)と連携し、LMP2のLMSに対するバイオマーカーとしての有効性と信頼性を検討した。病理ファイルから得られた正常子宮平滑筋組織、LMA組織、LMS組織各40症例で、LMP2の発現状況を抗LMP2抗体を用いた免疫組織染色により検討した結果、LMS組織で特異的に著しいLMP2の発現低下が認められた。特に、現行の病理診断では鑑別診断が困難とされた症例においても、LMP2の発現状況によりLMSとLMAとの区別が容易であった(図2)。
 抗LMP2抗体を用いた免疫組織化学染色法により簡便に上記疾患の鑑別を可能にしたことは、婦人科腫瘍の鑑別診断において革新的である。現在、国内外の行政の健康福祉活動として、20歳以上の女性に対して子宮癌検診(人種を問わず高い罹患率のLMAを含む)を推奨している。また、総合試薬・診断メーカーと共同で、婦人科腫瘍の鑑別診断(免疫組織化学染色での確定病理診断)システム開発を行っている(注2)。

図1 LMP2欠損マウス(下段)における子宮平滑筋肉腫の自然発症
図1 LMP2欠損マウス(下段)における子宮平滑筋肉腫の自然発症

図2 LMP2の発現症例は、LMAで認められる(茶色)が、LMSでは認められない
図2 LMP2の発現症例は、LMAで認められる(茶色)が、LMSでは認められない

注1: 信州大学医学部産科婦人科講座、同付属病院臨床検査部、国立がんセンター研究所病理部、兵庫県立がんセンター研究部、京都大学医学部産科婦人科講座、東北大学医学部産科婦人科講座、慶応義塾大学医学部産科婦人科講座。
注2: イスラエルのSIGMA-Aldrich Israel社が新規技術の有用性、将来性を認めるところとなり、2007年10月19日付で信州大学との間で、ヒト子宮平滑筋肉腫の診断試薬の共同開発を行う契約を結んだ(契約期間:20年間)。