市村学術賞

第44回 市村学術賞 貢献賞 -02

光周波数コムによる長さの国家標準

技術研究者 独立行政法人 産業技術総合研究所 計測標準研究部門
主任研究員 稲場 肇
技術研究者 同研究所 同研究部門
研究科長 洪 鋒雷
推  薦 独立行政法人産業技術総合研究所

研究業績の概要

 レーザー周波数の精密計測は、可視〜近赤外光領域における分光学などの基礎物理はもとより、長さ標準や光通信などの産業的研究分野において不可欠な技術になりつつある。しかしながら、周波数を精密に測るための光周波数コムが登場した当時、主流だった固体レーザーを利用した装置は、システムが複雑で長時間の連続運転が困難な上、小型化が難しく実用化の目処は立たなかった。
 本研究ではこれらの問題を解決すべく、モード同期ファイバーレーザーを利用した光周波数コム(以下ファイバーコム)に着目し、そのオフセットビート信号の検出や光周波数計測など、その有用性・優位性を世界に先駆けて示すとともに、レーザー系および制御系を自ら設計・製作することで周波数安定度と信頼性を向上させ、1週間を超える長期連続測定を世界で初めて実現するなど、一連の学術的成果を挙げた。一方で品質システムの構築や、計量法に基づく校正事業者登録制度等に係る技術委員会に諮るなど国家標準としての運用を目指した。そして2009年7月、「光周波数コム装置」が、経済産業大臣により長さの国家標準として指定された。その結果、レーザー波長の校正能力が従来に比べ300倍高精度化されたばかりでなく、それまで633 nmヘリウムネオンレーザーのみしか校正できなかった標準供給体系を500 - 1684 nmに拡大した。これにより、例えば大容量光通信などで需要が高まりつつある波長1550 nm帯の波長基準光源を国家標準トレーサブルとすることが可能となった。本ファイバーコムは、国内での定常的な標準供給以外にも、レーザー波長の国際比較(現在までに7ヶ国)など国際相互承認協定の運用にも貢献するとともに、関連技術は多くの大学および企業(2011年現在、5大学5企業)に技術研修や共同研究を通じて移転されつつある。
 本研究成果は、波長基準光源の校正を通じ、光通信の大容量化、および長さ計測を必要とする多くの製造業の競争力向上に寄与するものである。現在、光周波数コムに関しては化学分析、温度計測、テラヘルツ関連技術など多くの応用が報告されており、受賞技術を活かせる場面がますます多くなることを期待している。

図1

図2