市村学術賞

第48回 市村学術賞 功績賞 -01

白色と黒色の材料から作る様々な色の色材の開発

技術研究者 名古屋大学 大学院工学研究科
准教授 竹岡 敬和
推  薦 名古屋大学

研究業績の概要

 我々が豊かな生活を送る上で、鮮やかな色を示す退色しない染料や顔料(色材)の存在は欠かせない。さらに、低毒性、低環境負荷性を備えた色材が安価で大量に得られれば、今後の我々の暮らしが永続的に発展可能で快適になることを後押しするだろう。そのためには、自然界に豊富に存在し、環境負荷の低い自然調和性に優れた化合物を用いた色材作りが求められる。受賞者は、安全で安価な材料を用いた構造発色性材料(光の波長ほどの微細構造の存在により生じる色材)の研究を行っていたが、その多くが見る方向によって色相の変わるものがほとんどだったので、その角度依存性を無くすことができれば、従来の色材に変わるものになると考えた。
 受賞者は、人や環境への負荷の低い材料から調製した白と黒の微粒子を混ぜることで非常に鮮やかな角度依存性のない構造色が発現することを発見した。例えば、粒径の揃ったサブミクロンサイズのシリカ微粒子(白い微粒子)を水などに懸濁させて基板上に塗布し乾燥すると、図1の左側のように白い膜として得られる。しかし、カーボンブラック(CB:黒い微粒子)を加えると、CBの添加量に応じて鮮やかな色を示すようになる。膜から観測される色相は、用いたシリカ微粒子の粒径に依存し、色の彩度や明度は加えたCBの量によって変わる。つまり、白と黒の微粒子によって様々な色を示す色材を得られることが分かった(図2)。白い微粒子の材料としては、酸化チタンなどの無機物質や有機高分子も利用することができ、黒い微粒子には酸化鉄や銀微粒子などの材料も使える。環境や人にやさしい安価な材料を利用できるので、従来用いられていた人や環境にリスクの高いと思われる色素や顔料に変わって、毒性が少なく、かつ非退色性の色材を低コストで調製することが可能になる。

図

図2