新技術開発助成

第104回新技術開発-04

CUBIC全細胞解析システム

技 術 開 発
契 約 者
株式会社 CUBICStars
代表取締役 田中 義紀
所 在 地
福岡県久留米市
技   術
所 有 者
株式会社 CUBICStars、国立研究開発法人 理化学研究所
技   術
開 発 者
株式会社 CUBICStars 研究開発部門
取締役CTO 上田 泰己

技術開発内容

 現在の病理診断方法は、病理組織の一部(断面)しか観察しないため、転移ガンのような小さな病変を見落とす危険性があり、誤った診断により適切な治療を受けられないことがある。病理検体内の全細胞を透明化した上で、特定の組織や細胞のみをマーキングして、3次元的に観察することにより、この問題を解決できると期待されている。
 技術開発者は、生体中の色素、とりわけ赤血球に含まれるヘムをアミノアルコールにより除去することで、従来方法が抱えていたタンパク質の破壊等の問題を回避し、哺乳類の全身や各種臓器を透明化する手法(CUBIC技術)を開発した。しかしこの技術を、ヒト組織病理研究や病理診断へ実用化する上では、3次元撮像の速度の遅さと、3次元組織染色の難しさを解決する必要がある。そこで、本事業では、高速な組織撮影が可能な顕微鏡と、病理研究でニーズの高いリンパ球、血管とリンパ管、癌細胞などを特異的に染色する試薬キットを開発する。組織撮影の課題に対しては、従来製品の5倍以上にあたる20フレーム/秒(2048x2048,16bit)以上の3次元撮影が可能、かつ広視野のマクロズーム観察系と高倍率観察系を融合することで病理検体の全体の検索と、病変部位の高解像度な観察を1台で両立可能とする、そして簡便に操作可能な、光シート顕微鏡を開発する。組織染色については、5x5x10mmの生検組織検体を一週間以内に染色可能で、使い易く安全性の高い水溶性試薬のキットと染色プロトコルを開発する。
 透明化・染色により、病理診断の精度が向上し、従来見落としていた病変を発見可能であることは、大腸がん患者の微小がん転移等の検出において、研究レベルではすでに実証されている。本事業により、臨床診査の現場における実用化へ向けた加速が図られると期待される。将来的には、創薬の進歩にも大いに寄与すると想定され、QOL向上への貢献に対する意義は大きい。

図