プラズマ溶射は高温高速のプラズマフレームにセラミックスや金属の粉体を供給し、溶融または半溶融の粒子を基材表面に吹き付けて皮膜を作る技術で、耐摩耗性、耐食性、耐熱性の向上、電気磁気特性の付与など表面改質処理技術として広く産業に利用されている。しかし従来の外部供給型トーチは溶射材料をプラズマフレームに横から投入するため材料がフレームの中心に入りにくく、皮膜形成に寄与する材料歩留まりが非常に低いという問題がある。
本技術開発では、主トーチノズルから同心状に複数の分岐したプラズマを発生し、その中心から溶射材料を軸方向に供給するアキシャルフィード型で、主トーチのプラズマを副トーチのプラズマと繋ぐプラズマ溶射トーチを実現する(図1、2)。その結果、材料噴出孔をノズル内部に持つ既存アキシャル型に比べ、(1)溶射材料を高温(10,000℃以上)のプラズマアークに直接投入することができる、(2)材料供給機に高い背圧がかかる対策(高耐圧設計)を不要とする、(3)各種活性ガスが使用できる、という優位性を持つプラズマ溶射トーチとなる。
本技術により、従来に比べて溶射材料コストの格段な低減、溶射皮膜の緻密化を達成するのみならず、ナノ粒子の懸濁液や金属錯体、有機金属の液状材料など、これまで実現されていない溶射材料への対応を可能とし、溶射技術の適用を格段に拡大する。特に表面処理技術の一つである蒸着の代替技術として燃料電池電解質膜、光発電素子など、今後重要性が増す機能性薄膜の高能率な製造技術として広い分野で貢献することが期待できる。
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