高度な技術を必要とする手術が急増しているにも関わらず医療従事者は減少し、身体的・心理的負担増に伴う手術器械等の体内遺残事例の増加が懸念されている。特に、手術前後の看護師によるガーゼカウントはヒューマンエラーを引き起こしやすく、自動カウンタ装置が医療現場で熱望されている。
これまでガーゼにRFIDタグを取り付け電波で自動カウントする技術はあったが、ガーゼが高額なのと、チップ部が鉗子やピンセットで傷ついて読み取れないこともあり普及には至っていない。図1は本自動カウント装置の構成図である。丸めたままのガーゼを容器に入れ360度方向から自動的にX線撮影(図2)を行う。撮影画像からガーゼの金属繊維部(図2の黒い部分)の長さを画像処理で求め、ガーゼの枚数を算出することが可能。例えば、(A)開腹手術前に使用予定のガーゼを計測。(B)術中に使用済のガーゼをカウント。通常は複数回累積。(C)閉腹直前に未使用ガーゼを計測。(B)+(C)が(A)と等しいか照合することで遺残を閉腹前に確認できる。
これまで通常は看護師が手動でガーゼの枚数の過不足を確認し、更に、術後に術部をX線撮影し医師が目視にて遺残の確認を行っており人的ミスが生じやすい状況にあった。本装置により、医療従事者に負荷をかけずガーゼの遺残を確認することができる。体内遺残発生率は1万件に1回、その内、ガーゼが7割といわれており、これは大学病院で一年に1回起こりえることを意味する。医療過誤から患者を守ると同時に、医療訴訟リスクによる医療従事者の減少を抑えることは急務である。本技術はこれらの社会的な問題解決の一助になるものと考える。
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