新技術開発助成

第96回新技術開発-15

鉄バクテリアを活用した重金属の除染技術開発

技 術 開 発
契 約 者
榎本商事株式会社
代表取締役 白井 圀義
所 在 地
北海道札幌市
技 術
所 有 者
門上 洋一、榎本商事株式会社、谷洋工業株式会社
技 術
開 発 者
門上技術開発研究所
所長 門上 洋一

技術開発内容

 福島第一原発事故により飛散した放射性セシウムや、トンネル工事により掘削される土砂中の自然由来重金属による土壌及び水の汚染は、深刻な課題で、効果的な対策技術が望まれている。申請者のチームは、青函トンネル内で異常に繁殖する数種類の鉄バクテリアのうちから、多様な重金属を吸収し、その細胞外の鞘の部分に濃縮する好気性のバクテリアを発見した。このバクテリアが鉄、マンガンのみならず銅、コバルト、クロム、ニッケル、カドミウム、水銀、セレン、ヒ素など多様な重金属や、セシウムを吸収することを検証するとともに、これが繊維状に増殖することから、不織布で内包して取扱やすいシートを形成し、不織布を透過する水や微細粒土に結合した金属の除染に活用することを着想した。これまで、シートをセシウム汚染水田に適用した際の汚染水及び土壌における放射能除去効果を予備的に検証してきている。
 この助成事業では、微細粒土により詰まることのない不織布を選定してシートを形成し、バクテリアの生育条件の異なる様々な環境条件の中での除染機能を実証確認するとともに、このシートを多数水田に設置し、通気するシステムについてセシウム汚染水田において実証実験する。更に、重金属掘削土石に対して、汚染水に鉄などの優先的エネルギー源が含まれている場合の各々の重金属の吸収状況を検証して、実際のトンネル土石を用いてモデル実験を行なう。
 鉄バクテリアは、何らかの方法で岩石中の鉄を利用している、マンガン団塊の生成要因とも考えられる極限微生物の一種であるが、これまではトンネル内などで鉄を腐食させるものとして駆除されて来たものである。これを有用に活用する生物活用技術について、実用性が充分に確認できれば、福島第一原発周辺地域の除染手段として活用できるのみならず、更に、汚染土壌の中間貯蔵対応や、敷地内の汚染水漏えい対策としても貢献できる可能性がある。また、重金属汚染土砂対策としても、土砂の下にシートを設置するのみで環境の汚染を食い止められる効果的な手法となり得ることから、普及が期待され、社会性が高い。

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