植物研究助成

植物研究助成 19-10

函南・箱根・伊豆半島における植物の地形的分布と種特性の関係

代表研究者 横浜国立大学 大学院環境情報研究院
准教授 酒井暁子

背景

 当該地域は世界でも稀な現象である島弧同士の衝突によって形成された。伊豆弧(半島)による本州弧の圧迫は現在も続いており、極めて速い隆起・侵食作用による急峻で軟弱な地形が卓越する。地殻活動帯にあるために火山活動や地震の影響も強い。生物地理学的には本地域は独特の植物相を持つことが知られており、こうした特殊な環境との関連が示唆されているものの、地表の様相と植物の性質との具体的な関係については明らかにされていない。

目的

 上述の背景を踏まえ,本申請課題では、函南およびその周辺地域において、植物の分布特性と生活史特性を調べ、地形の構造とこれらとの関係を明らかにすることを目的とする。

方法

 2次谷程度の集水域を選定し、GISおよび現地測量によって地形を指標する測値を取得し、多変量解析によって地形単位を抽出しGISで地図化する。現地調査によって同集水域での植物の分布パターンを明らかにし、地形との関係を明らかにする。特に本地域に特徴的な種や第三紀遺存種に着目する。さらに代表的な木本種については、成木サイズと繁殖開始サイズの関係、萌芽特性など樹幹修復能力、植物体内資源分配パターン等を調べ、分布パターンとの関連性を解析する。

期待される成果

  世界の中で日本は生物多様性の高い地域の一つである。その理由の一つとして、地形が起伏に富み多様な生息立地が存在することが挙げられる。これまで丘陵地においてはその具体像が明らかにされているが、国土の大部分を占める山地においては、調査の困難さなどから未だ研究例が乏しい。本申請課題によって、日本の生物多様性を支える背景とメカニズムの一端が明らかになり、今後の日本の自然環境保全戦略に有用な情報を提供できることが期待される。