植物研究助成

植物研究助成 19-14

植物研究園における3次元計測データを用いた景観シミュレーション

代表研究者 大阪府立大学 大学院生命環境科学研究科
准教授 中村彰宏

背景

 庭園や植物園には多様な植物が植栽されている。植物研究園にもカエデ類をはじめとした多くの植物が植栽され、剪定などの管理によって美しい景観が維持されている。十分な管理下でも、樹木の枯死や成長、実生の出現などで常に庭園や植物園の景観は変化する。それゆえ、個々の樹木の植栽位置や樹高などだけでなく、林冠形状や景観がどのような樹木群によって形成されているかを時系列的に評価して樹木管理することが庭園や植物園では重要である。

目的

 本申請では、庭園や植物園などの景観が重要な植栽地を対象に、樹木の成長や剪定などによって生育状態が変化したときに、どのように景観が変化するかをシミュレートし、景観に配慮した剪定などの樹木管理手法の確立を目指す。

方法

(1) 植物研究園における地形および樹木形状の3次元計測
 植物研究園内の地形および樹形などの3次元計測を、地上設置型レーザスキャナを用いて行う。この測器を研究棟や庭園などの多くの地点に設置して、地形や樹木の幹や葉の色情報を含めた3次元データを取得する。この地形と樹冠形状のデータから、景観に影響を与える個体の樹高や樹冠形状を算出し、管理のための基礎データとする。園内の良好な視点から景観を再現するとともに、植物研究園紹介のための動画も作成する。
(2) 樹木の成長モデルの開発
 まず樹形が単純なスギを対象に様々なサイズの個体を3次元計測し、この実測データをもとに、成長や剪定にともなう樹冠形状の変化をシミュレートできるモデルを開発する。そして(1)で得られた景観データに、シミュレートした様々なサイズのスギを配置した場合や、園内で成長しすぎた樹木個体を剪定した時の景観をシミュレートする。

期待される成果

  本研究では、地形や樹冠などの3次元形状の実測データを使用するため、再現性の高い景観描画を任意の視点から行うことができる。作成した紹介動画によって来園できない人にも本園の美しさを伝えることができる。成長モデルと組み合わせることで、過去や将来の景観シミュレーション、樹木の剪定や伐採時の海や島などの眺望景観シミュレーションも可能で、庭園等の景観保全のための樹木管理の手法の発展に大きく貢献できると期待される。これまでは十分でなかった樹木の樹種ごとの3次元形状の蓄積も行えるため、様々な庭園や植物園などの景観シミュレーションを行う上での貴重なデータ蓄積にもなると期待される。