植物研究助成

植物研究助成 19-15

植物群落の環境と植物生体情報の3次元計測法の開発

代表研究者 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
チーム長 佐瀬 勘紀

背景

 わが国の施設園芸の改善策の一つは、施設をより大型化し、コスト低減をはかり競争力を強化することである。しかし、大型化すると環境の分布が顕著になるため、環境の均一化も考慮して環境制御をする必要がある。従来の手法では、一ヶ所、しかも、気温のみの測定に基づく制御がほとんどであり、根本的な改善が必要である。二酸化炭素濃度や湿度についても栽培期間を通しての計測とモニタリングが必要である。また、植物情報としての群落温度の計測は最近まで行われて来なかった。施設の大型化の動向に対してセンサー技術は遅れているといっても過言ではない。近年、センサー素子の開発・進歩は著しく、施設園芸に安価に応用が可能になりつつある。

目的

 温室の床面積が1ha以上の大規模栽培において、温室内の環境条件と植物生体情報の分布を総合的にかつ3次元的に計測でき、実用規模で使用可能な手法を開発する。植物の存在も念頭に置き、気温、湿度、二酸化炭素濃度、気流速、植物群落温度、植物群落受光量などを計測の対象とする。

方法

 前年度(平成21年度)は、長期的安定性の向上のため、サーモパイル部と初段アンプ部を熱的に一体構造とし、銅製のシャーシとケースに密着させた二酸化炭素センサー3号機を試作した。また、細線の抵抗を測定することで気温を測定する細線気温センサーを設計・試作した。当該年度は、これらを実際の温室に設置し、測定精度(安定性、リニアリティなど)や改良点を検討する。一方、同じ細線を積極的に加熱し、その後の放熱による温度降下を測定することによって気流速が計測できる可能性が明らかになった。しかも、温室などの低気流速域の測定にむしろ適している。そこで、温室栽培で利用できるような気流速センサーをめざし、細線気流速センサーを実際に設計・試作し、特性や精度を検討する。具体的には、タングステン線の直径・長さ・形状、加熱温度、測定時間などを風洞実験で最適化した後、温室内での使用を検討する。一方、植物群落の全方位型のセンサーや群落の温度センサーについても、センサー素子や回路を検討中である。それらをコンパクトな筺体に一体化して組み込み、温室環境下でテストする。

期待される成果

 施設園芸のセンサー技術において今回のような手法の開発はまったく行われておらず、世界的にも希有である。大型化された温室の環境制御や環境のモニタリングに不可欠なセンサー技術として応用・実用化が期待できる。