植物研究助成

植物研究助成 19-16

蛍光試薬をプルーブとして用いる植物内水移動可視化法の開発

代表研究者 岩手大学 農学部 農学生命課程
准教授 松嶋卯月

背景

 農業における水利用の効率化は食糧供給問題を解決する上で重要な課題である。水利用の効率化を実現するためには、いかに水を必要とする植物に必要なだけ水を与えることができるかが重要になる。植物の水ポテンシャルは植物の水要求度の指標となる。また,昨今の研究で、作物にかかる水ストレスの程度を水ポテンシャルを測定することで診断することができるようになった。しかし、その測定にはサイクロメータ等、高価で大掛かりな装置が必要であり、簡易な水ポテンシャル測定法の確立が求められている。

目的

 申請者らは植物内における水移動に伴う蛍光試薬の動きを可視化する本年度の研究を遂行するうち、試料植物の水分状態によって蛍光試薬の移動速度が異なる傾向があることを確認した。そこから、植物の葉片が蛍光試薬を取り入れる速度等を測定することで水ポテンシャルの推定値が得られるのではないかと考えた。そこで、本研究の目的を蛍光試薬をプローブとして用い、対象葉片の水ポテンシャルを推定する計測システムを開発することとする。

方法

 蛍光試薬の移動から水ポテンシャルを推定する方法は2つ考えられる。まず、投与した蛍光試薬の植物内における拡散速度の違いから水ポテンシャルを推定する方法(拡散速度法)、また、浸透ポテンシャルが異なり、かつ、その値が既知である蛍光色素溶液を数種用意し、試料植物内に溶液が拡散する浸透ポテンシャルと拡散しない浸透ポテンシャルで挟みうちにすることで、対象葉の水ポテンシャルを推定する方法(挟みうち法)である。作成するシステムにおける推定値の妥当性を検討するためにサイクロメータを用いる。また、本計測に適した安価な蛍光励起光源、蛍光発光デテクタおよび工学フィルタの選定を行う。

期待される効果

 本研究が遂行されることで、簡易および安価な方法で植物の水ストレスが推定可能となる。すなわち、作物生産現場で生産者が容易に水ストレスの程度を判断することが可能になり、効果的な潅水の実現や根ぐされの回避に用いられることでより効率的な生産の実現に役立つ。