植物研究助成

植物研究助成 19-21

地上型レーザーによる樹木のバイオマス量と物質生産量の把握

代表研究者 千葉大学 園芸学研究科
準教授 梅木 清

背景

 地球温暖化を抑制するため森林による炭素吸収機能が重要視されている。現存する森林からカーボンクレジットを得るには、樹木の炭素吸収量をより正確に測定することと、炭素吸収を実現する個体・群集レベルの物質生産機能を理解する必要がある。
 樹木の成長を把握するため古典的な直径や樹高の測定が行われてきたが、近年急速に発展した地上型レーザーを用いて樹木の幹・枝・葉の位置や大きさを全面的かつ正確に測定することが可能になってきた。また、コンピュータ技術の発展により、地上型レーザーで測定した樹木の3次元構造と葉の光合成測定・環境条件を組み合わせた機能的・構造的樹木モデルをコンピュータ内に構築し、炭素固定を実現する樹木個体や群集の光合成機能・体制を理解することが可能になった。

目的

 本研究の第一の目的は最新の地上型レーザーを用いて、単木当たりの木質バイオマス量を詳細に把握することである。また、第二の目的は、測定された樹木3次元構造と葉の光合成特性を組み合わせ、環境と相互作用しながら光合成を行う樹木の機能と構造をコンピュータ内に再現する機能的・構造的樹木モデルを構築することである。

方法

 最新の地上型レーザーは独自の波長解析技術を採用しており、その反射特性を利用し、木部と葉部のデータ分類を行う。落葉、常緑と季節的葉量変化の仕方が異なる代表的な樹種に対し、完全な3次元構造プロファイラーを取得する。夏季、冬期と2時期でデータ収集を行い、落葉による葉量把握及び正確な木質バイオマス量の把握を行う。
 地上型レーザーによって把握された3次元構造を用いてレイトレーシング法により個葉に当たる光の強度を計算する。別に測定・定式化した個葉の光合成モデルを用いて、光強度を光合成速度に変換する。これにより、実測不可能な個体の光合成速度及びその環境応答を予測する。

期待される成果

  これまでの地上型レーザーの解析技術では、葉部、木部の分類が行えなかっ  た。本研究では、レーザーから木質部、葉部を分類し、木質バイオマスの詳細把握が可能となる。また、正確に把握された樹木の3次元構造を基礎にして樹木の機能的・構造的樹木モデルが構築され、変動する環境に対応する樹木の炭素固定が予測できるようになる。これを使用して、炭素固定の面で効率的な樹木のあり方が明らかになり、新しい樹木管理指針が作成できる。