植物研究助成

植物研究助成 26-13

高度な栽培管理を可能とするイチゴの3次元形状計測技術の開発

代表研究者 宮城県農業・園芸総合研究所
技師 高橋 正明

背景

 東日本大震災により宮城県のイチゴ生産は一変し、園芸施設の大規模化が進み、施設内には環境計測機器の導入が進んでいる。しかし、植物体の状態を得る手段は、依然としてメジャーによる生育調査が中心である。イチゴは栄養生長と生殖生長のコントロールが難しく、栽培管理において草勢判断は重要な要素である。一方で、3次元センシング機器により、植物体の状態をデータ化することが可能となってきた。また、生産者間でも、ネットワークを形成し、高収益な栽培を目指そうとする動きが強まっている。

目的

 高度な栽培管理を可能とするイチゴの3次元形状計測技術の開発
(1) 3次元センシング機器を用いたイチゴの草勢判断手法を開発する。
(2) 3次元センシング機器を用いて、生育場所や品種ごとに、高収量となるイチゴの栽植密度の推定手法の開発を行う。
(3) 生産者ネットワークで、3次元センシング機器の有効利用の方法を検討する。

方法

(1) 当研究所内施設のイチゴを対象とする。植物体の情報取得のためには、Kinectセンサを用いる。得られる草高、葉面積のデータ、施設内環境や収量のデータより、イチゴの草勢を判断するための指標を開発する。
(2) 当研究所内において、草姿が異なる品種の栽植密度が異なる試験区を設定する。それぞれの試験区ごとにKinectセンサ等を設置し、栽培期間を通して群落の層別の葉面積を入手する。群落内の受光量を推定し、生育場所や品種ごとに、どの程度の栽植密度が最適となるかを明らかにする。
(3) 宮城県内の生産者ネットワークが組まれている生産者の園芸施設内にKinectセンサ等を設置し、各施設の情報を収集する。施設内環境情報の他、生育情報の共有も行い、栽培管理や環境制御に応用できるかを検討する。

期待される成果

 本研究により、イチゴの草勢判断が経時的に非破壊で行え、高度な栽培管理が可能となる。また、生育場所や草姿が異なる品種ごとに、最適な栽植密度を、数値的に示すことができると考えられる。宮城県のイチゴ生産者団地では、施設等が共通化され、生産者間の交流も既に盛んであり、本技術により得られる情報が有効利用される可能性が高く、本技術の迅速な普及が期待できる。