植物研究助成

植物研究助成 26-14

植物の青色光受容体機能の検出技術開発とその利用

代表研究者 新潟大学大学院 自然科学研究科
教授 酒井 達也

背景

 フォトトロピンは単細胞緑藻植物から被子植物まで広く保存された青色光受容体であり、植物の光環境適応と物質生産に重要な働きをしている。フォトトロピンがどのようなシグナル伝達経路を介して様々な生体制御を行っているのか、未だその詳細は明らかになっていない。応募者らは最近、フォトトロピンによる根の光屈性誘導が、教科書で記述されているオーキシン不均等勾配を必要とせず、オーキシンを介さない遺伝子発現調節を必要としていることを明らかにした。そこでフォトトロピンによる遺伝子発現調節の実体を明らかにすべく、平成28年度本助成の支援の下、フォトトロピン活性化に応答した遺伝子発現パターン変化を RNA-seq 法によって網羅的に検出した。その結果、根においてフォトトロピン活性化依存的に発現調節を受ける複数の遺伝子を同定した。

目的

 2年目本研究助成課題として、発見されたフォトトロピンの遺伝子発現調節に働く新たなシグナル伝達経路の解明を目的に研究を行う。同定したフォトトロピン発現制御遺伝子のうち20個について、1)発現パターンの詳細、2)発現制御機構、の2点の解明を具体的な目標とし研究を行う。

方法

 1)では、定量的 RT-PCR法及びプロモーター融合レポーター遺伝子を導入した形質転換体を用いて、各フォトトロピン制御遺伝子の光や植物ホルモン等の環境刺激への応答性、フォトトロピンの下流で働く既知のシグナル伝達因子依存性、時空間的な遺伝子発現パターン制御等について明らかにする。フォトトロピンがどのような組織とタイミングで各遺伝子の発現を調節し、植物の光環境適応に働くのか理解を深める。2)では、データーベース及び実験的検証によるフォトトロピン活性化に応答するプロモーター内シス配列の同定及びそこに結合して働くトランス因子の探索を行う。

期待される成果

 現在、主に植物工場のLED光源利用において、青色光の物質生産や病虫害抵抗性の調節の効果が注目されている。本研究によって、植物に対する青色光効果の分子基盤を理解し、光合成調節の仕組みを明らかにし、農学的なLED光源の効率的利用を可能とする。また緑藻類より存在する phot 分子の生化学的機能を明らかにすることによって、植物の光環境応答の進化解明に貢献する。