植物研究助成

植物研究助成 26-17

植物由来の細菌増殖刺激物質を利用したオーダーメイド土壌改良技術の開発

代表研究者 名古屋大学大学院 生命農学研究科
講師 近藤 竜彦

背景

 枯草菌に代表されるBacillus属細菌は、植物根の表面に定着して植物病原菌の感染を抑制したり、植物ホルモンを生産して植物の生育を促進するなど、植物の生育に有利な特性を持っていることが知られ、植物の生育に有利な土壌環境を作るための土壌改良剤として利用されている。しかし、Bacillus属細菌が植物根に定着する仕組みについては未だ不明の点が多い。
 申請者は、植物根から調製した浸出液を土壌に添加すると、8時間程度でBacillus属細菌の急激な増殖が見られ、その増殖は根浸出液に含まれる未知の生理活性物質に起因するという知見を得た。また、増殖を促される細菌がBacillus属でもかなり特定の種に限られていたことから、植物は自らと「相性の良い」細菌を特異的に増殖させる相互認識的な仕組みを持っていることが予想される。

目的

 本研究では、植物根から分泌され、特定のBacillus属細菌の増殖を促す生理活性物質の化学的本体を明らかにする。さらに、この生理活性物質によって増殖が促される細菌を土壌中から単離し、植物の生育に与える効果について検証する。さらに、主要な畑作作物についても同様の研究を展開し、植物とBacillus属細菌の共生関係の全体像について明らかにする。

方法

 定量的PCRによって土壌中における特定のBacillus属細菌の増殖を観察する系を確立した。細菌の増殖を指標として、根浸出液からこの生理活性物質を精製、同定する。活性物質を添加した土壌からこのBacillus属細菌を単離し、植物の生育に与える影響を明らかにする。ダイズやコムギなどの主要畑作作物についても根浸出液に応答して増殖するBacillus属細菌とこの増殖を促進する生理活性物質の同定を試みる。

期待される成果

 畑作作物とそれぞれの根浸出液中の生理活性物質によって特異的に増殖するBacillus属細菌の組み合わせを明らかにすることで、それぞれの畑作作物の根に非常に良く定着する細菌を利用した「オーダーメイド」型の土壌改良技術を開発することが可能になる。