植物研究助成

植物研究助成 27-08

伊豆諸島におけるキキョウ科ツリガネニンジン類の有効な訪花昆虫相の解明

代表研究者 大阪教育大学 教育学部
准教授 岡崎 純子

背景

 伊豆諸島は本土との距離が比較的近いにもかかわらず、地史的には海洋島であり、訪花昆虫相の変化がこの地域での植物の種分化を引き起こしてきた要因の1つとされている。材料とするツリガネニンジン類は形態的に多型であるためツリガネニンジン類とよばれ、分類学的には1種で3変種にまとめられている(岡崎,2017)。伊豆諸島には変種ツリガネニンジンの海岸型が分布している。近畿地方のツリガネニンジン類では花は夜間に蜜を分泌するが訪花昆虫としては昼行性の双翅目と夜行性の鱗翅目が有効な訪花昆虫である。このような昼夜で異なる昆虫種群を送粉者として利用している植物種が伊豆諸島ではどのような昆虫を有効な訪花昆虫とするのかその研究例は非常に少ない。

目的

 本研究では伊豆諸島におけるツリガネニンジン類の訪花昆虫相とその中で有効な訪花昆虫が何であるのか、花の蜜の分泌パターンと訪花昆虫の行動解析と付着花粉量の測定から明らかにするとともに、本土との距離による島間での違いの影響の有無を検証する。特に本種は強い雄性先熟性をもつため雄期と雌期の時期を区別することによって有効な訪花昆虫を明確にする。

方法

 本土からの距離の異なる2島(伊豆大島、三宅島)を調査地として設定し、この2集団で有効な訪花昆虫相を決定する。調査はナイトビジョン撮影カメラを定点設置し終日撮影するともに訪花昆虫の採集を行う。採集した訪花昆虫は同定および花粉の付着部位・付着量の測定を行う。ビデオデータからは雄・雌期の両時期への訪花の有無と頻度の解析を行い、訪花昆虫の行動と花の性発現期との対応を解析する。また同時に経時的に蜜量を採取し、分泌時間帯と蜜量トの関係を明らかにする。これらの結果から昼夜の有効な訪花昆虫相を特定する。さらに2島間で有効な訪花昆虫に違いがあるのかを明らかにする。

期待される成果

 伊豆諸島における送粉系変化に対応した進化の研究はスペシャリストのハナバチ類などを主たる訪花昆虫とする植物種群での研究が中心となってきた。従来の研究と異なり、本土で昼夜の異なる昆虫群を訪花昆虫として利用している植物種において伊豆諸島での訪花昆虫相にどのような組成変化がみられるのか解明でき、島嶼での種分化機構について重要な例を示すことができる。