植物研究助成

植物研究助成 27-17

生長過程での植物中硝酸イオン濃度と蛍光強度変化の関係ついて

代表研究者 木更津工業高等専門学校 基礎学系
准教授 嘉数 祐子

背景

 葉柄汁中の硝酸イオン濃度を測定するためには、それらを破砕・圧搾しなければならないため大変手間がかかる。そのため作物の品質管理や硝酸塩低減研究に用いる各種の計測方法にも簡便な手法が求められている。一方、植物はストレスによって紫外領域で励起された蛍光強度を変化させることが知られている。

目的

 我々のこれまでの研究で、トマト及びコマツナの葉柄に含まれる硝酸イオン濃度と385nm及び405nmを励起光とした蛍光強度変化の関連性を見出した。しかしこの蛍光はクロロフィルによる蛍光領域であり、クロロフィルは発芽から各成長段階で増加する。これまでは十分に生長した試料のみを使用して測定を行ってきており、様々な生長段階でも硝酸イオン濃度と蛍光強度変化の関係を正しくとらえられているか検討する必要がある。また、光環境が異なる環境下についても硝酸イオン濃度と蛍光強度変化の関係を明らかにする必要がある。

方法

 本研究では、実験室内の人工光型養液栽培システムを用いて栽培期間が短いコマツナを栽培・測定する。
1. 各生育段階における硝酸イオン濃度と蛍光強度変化との関係
 励起光として385nm及び405nmを用いて、発芽から採取までに一定期間ごとに硝酸イオン濃度と蛍光強度変化を測定し、その関係を明らかにする。異なる種にも適用可能か検証するため千葉大学環境健康フィールド科学センター内の太陽光型植物工場で栽培されるトマト葉でも実験を行う。
2. 光環境の変化に伴う硝酸イオン濃度の低減と蛍光強度変化の関係
 光環境(光量・光質)を変化させた場合でも硝酸イオン濃度と蛍光強度変化の関係がこれまでの手法に一致するかを検証する。

期待される成果

 葉柄に含まれる硝酸イオン濃度の測定が、紫外励起光を用いて簡便かつ非破壊で測定することができれば、生産現場の効率化及び硝酸塩低減化研究に効果があると考えられる。また、流通上でも低硝酸野菜として消費者目線で確認することができるようになる。生長過程での硝酸イオン濃度を蛍光強度変化でとらえられれば、施肥のタイミング指標としても利用が可能になると考えられる。