植物研究助成

植物研究助成 27-21

フロンティア植物の成分による津波被害地植生回復技術の基盤研究

代表研究者 静岡大学 グリーン科学技術研究所
教授 原 正和

背景

 大震災、特に津波によって失われた植生の原状回復は困難である。津波の被災地では、厳しいストレスにより、緑化植物ですら定着できないことがある。もし、低コストかつ低環境負荷な方法で、植物の環境適応能力を効果的に高めることができれば、被災地の植生回復は格段に容易になる。申請者は、荒地に最初に進出するフロンティア植物の生命力に着目し、フロンティア植物の抽出エキスの機能研究を行った。その結果、タケニグサの抽出エキス(TGエキス)が、植物の高温耐性や乾燥耐性を高めることを発見した。TGエキスの有効成分(サンギナリン)を散布した植物では、散布後速やかかつ持続的に熱ショック蛋白質が増加していた。熱ショック蛋白質は、植物のストレス耐性に関わる重要な蛋白質であり、その増加が植物のストレス耐性を高めたと言える。そこで、申請者は、TGエキスを被災地の植生回復に利用すべく、本研究を構想した。

目的

 TGエキスによる津波被災地の植生回復技術の基盤を確立する。

方法

 研究者が所属する静岡大学静岡キャンパスは、ハマヒルガオの生息地である駿河湾岸(大谷海岸)に近い。そこで、海岸を津波被災地と見立て、緑化植物として知られるハマヒルガオのほか、作物を使った実験を行う。TGエキスの投与区と対象区を設定し、植物におけるストレス指標を調査する。データを集計し、海岸植物の応答の特性を把握し、TGエキスによる津波被災地の植生回復法を策定する。

期待される成果

 TGエキスにより、海岸における植物の適応性の向上が確認できれば、津波被災地の植生を復元できる可能性が高まる。将来、津波被害の減災と植生回復を達成する技術の確立が期待できる。