植物研究助成

植物研究助成 29-16

植物の水利用効率を可視化する技術の開発

代表研究者 東京大学 大学院農学生命科学研究科
准教授 矢守 航

背景

 国内外において、過酷な乾燥ストレスに対する植物の応答機構は詳細に解析され、複数の植物種において乾燥ストレス耐性の向上例が報告されるなど一定の成果を収めている。しかし、乾燥ストレスが過酷にならない程度の水資源制限下で、高い水利用効率を実現する植物創成を手掛けた例は極めて少ない。今後、灌漑水を節減した条件下で、生産性を維持・向上する節水型農業が求められるため、植物の水利用効率の向上に関する研究は必須である。

目的

 作物が灌漑水の節減条件下で高い生産性を示すためには、植物自身の水分吸収能力や吸水量あたりの光合成能力 (つまり、水利用効率)を高めることが必要である。しかし、灌漑水の節減環境に対する植物応答機構は不明瞭な点が多く、水利用効率の観点から植物の高生産を考えた戦略はほとんどない。本研究では、植物の水利用効率を可視化する技術を開発し、水利用効率の遺伝的改良に向けた基盤研究を行うことによって、分子育種に適用するための研究戦略を確立することを目標とする。

方法

 クロロフィル蛍光と葉温の可視化技術を組み合わせることによって、光合成速度と蒸散速度を同時評価し、水利用効率の可視化を試みる。これまでに、クロロフィル蛍光による光合成可視化の構築を終えることができたため、今年度は葉温の可視化装置の構築と水利用効率算出のためのソフト開発を行う。

期待される成果

 本研究では、世界初の水利用効率の可視化装置を開発し、水利用効率の決定機構の解明と同時に、灌漑水の節減条件において高い物質生産能力を有する植物の創出に挑む。投入資源を節減しながら優れた生産性を維持し、かつ環境と調和した農業を目指していくことは、作物栽培の低コスト化や節水農業が推進されている我が国においても重要である。