地球環境研究助成

地球環境研究助成04-02

グレージェント力を持つ電界カーテンによる太陽電池パネル受光面の砂じん除去

代表研究者
鳥取大学 工学部・准教授
西村 亮

研究の背景・目的

 太陽電池受光面の除染は、現在は水洗によって行われており、それを機械化して請け負っている企業も国内にある。一方乾燥地では水は貴重な資源であり、手作業での洗浄は人件費の観点から望ましくなく、機械では装置の可動部に砂じんが侵入して故障を引き起こす懸念もある。さらに、NASAのMars2020プロジェクトにおいて探査機に搭載された太陽電池に火星の砂が堆積し、発電出力が低下したことがニュースで報道された。このように、太陽電池受光面の水洗や手作業でのメンテナンスが困難な場合において機械的な清掃システムでは可動部故障が懸念されるため、可動部を持たず、水を使わず、自動的に受光面の清掃を行うシステムが要求される。本研究ではその問題を解決するために電界カーテンを用いる。

研究内容・課題

 電界カーテンとは、進行波電界により帯電粒子(本研究では砂)を輸送する技術である。通常、電界カーテンは絶縁体内に平行に多相交流電極を配置し、粒子を電極と垂直な方向に移動させる。基本的な内容としては太陽電池受光面に透明電極材料を用いた電極を配置し、それに多相交流を印加することで砂を移動させ、太陽電池受光面上から排除するが、その電極形状等の改良を行う。申請者はこれまでの研究で、電界カーテン上の80%以上の砂が除去できることを示したが、電極間の一部に砂のクラスターが発生し、それが移動しない問題点が発生した。このクラスターは、現状では太陽電池受光面に留まるため、太陽電池セルの直上に存在すると発電性能に悪影響を与える。本研究の課題は、グレージェント力を用いてこの問題を解決することである。

課題解決の研究手法

 砂のクラスターは正電荷と負電荷が近接しており、電気双極子を形成していると考えられる。双極子は不平等電界中ではグレージェント力により電界の強い方向に移動する性質を持つ。そこで、太陽電池の左右の端に行くに従って電界が強くなる電界カーテンを提唱し、それによる太陽電池パネルの砂じん除去を行う。この電界カーテンでは、砂は太陽電池パネル上を下方向に移動しながら「脇に寄っていく」運動をすると考えられる。太陽電池パネルの「脇」はパネルの「余白」となっているので、そこに砂が残っても発電性能には影響しない。

期待される研究成果

 再生可能エネルギーとしての太陽光発電に着目した場合、大規模発電を行うには太陽電池を日射量が多い乾燥地に設置する事が有効である。この場合受光面に堆積する砂の除去を無人で、水を使わず、可動部分を持たず、消費電力が少ない(申請者の研究では太陽電池の定格発電量の0.4%未満)方法で除去できるため、発電電力量の増大およびメンテナンス費用を大幅削減が期待できる。また、宇宙空間での太陽電池の利用時のメンテナンスの効率化に寄与できると思われる。