地球環境研究助成

地球環境研究助成06-02

微細かつ単分散な白金クラスターの高機能化に基づく高活性燃料電池電極触媒の開発

代表研究者
東京理科大学 理学部第一部 応用化学科・教授
根岸 雄一

研究の背景・目的

 固体高分子形燃料電池(PEFC;図1)は、水素をエネルギー源とした社会において不可欠な装置である。しかしながら、2030年以降におけるPEFCの広範な普及のためには、カソードでの酸素還元反応(ORR)における白金(Pt)の質量活性を大きく向上させる必要がある。申請者らは最近、ORR触媒に~1 nm程度まで微細化されたPt ナノクラスター(~1-nm-Pt NCs)を用いることで、カソードでのPt質量活性を1760 A/gまで向上させることに成功した。本研究では、~1-nm-Pt NCsに対して、「合金化」、「担体の複合化」、及び「メラミンの表面被覆」などの高機能化手段を適用することで、5220 A/gのPt質量活性を有するPEFC電極触媒を創出する。

図


研究内容・課題

 本研究では、PEFC普及拡大に繋がる高機能なORR電極触媒の創製を最終的な目的としている。この目的達成のため、~1-nm-Pt NCsに対して、以下の3つの目標を達成する。
1)「合金化」、「担体の複合化」、及び「メラミンの表面被覆」が活性と耐久性に与える影響の解明。
2)「合金化」、「担体の複合化」、及び「メラミンの表面被覆」の制御による、2030年目標の3倍の5220 A/gのPt質量活性の実現。
3)得られた合金触媒について、市販のPt NPs/カーボンブラック(CB)よりも高い耐久性の実現。

課題解決の研究手法

 本研究は、大きくは3つの項目([項目①]-[項目③])より構成される。これら3つの項目を並行して進める。得られた結果を組み合わせることで、本研究の最終目的である、5220 A/gのPt質量活性及び市販品よりも高い耐久性を有したメラミン/合金NCs/CB触媒の創製を実現する。
[項目①: 合金化の効果解明とそれによる高機能NCs/CBの創出]
[項目②: 担体複合効果の解明とそれによる高機能担体の創出]
[項目③: メラミン修飾効果の解明とそれによる高機能触媒の創出]

期待される研究成果

 本研究の実現は、PEFCの価格低下、それによるPEFCの広範な普及に繋がると期待される。これにより、水素エネルギー社会の構築、及び地球温暖化の抑制はさらに加速されると期待される。