市村アイデア賞

受賞団体訪問

培われた生徒の「自主性」と「落ち着き」から生まれた成果
第53回(2022年度)努力団体賞 文部科学大臣賞受賞 那覇市立 石田中学校
文部科学大臣賞受賞の生徒と石垣吉博教頭 (左)、黒島裕子教諭(右)
文部科学大臣賞受賞の生徒と石垣吉博教頭 (左)、黒島裕子教諭(右)

文部科学大臣賞 「目盛りが読みやすいメスシリンダー」
「今回で2回目の応募でしたが、まさかこんな賞をもらえるとは思っていなかったので、最初は人違いでは? と信じられませんでした。今回のアイデアは、私が小学1年生のときから習っていたそろばんから思いつきました。バッと閃いたというか、一気に形になったアイデアです。小学生のときから算数とか計算が好きだったので、将来は高校の数学の先生になりたいと思っています」(2年生)


寄り添い支援することで育つ生徒たち

 第53回市村アイデア賞において那覇市立石田中学校(以下、石田中)は、2021年の第51回から3年連続の挑戦で、努力団体賞と個人賞トップの文部科学大臣賞受賞という快挙を達成しました。
 石田中は、那覇市の中心街から東に少し離れた繁多川地区の高台にある生徒数419名の中規模校です。繁多川地区は琉球王朝時代からの歴史ある地域で、世界遺産にも登録された識名園など歴史的な施設が数多く残っています。そんな環境のなか、石田中では「ほめて、認めて、生徒を伸ばす」という目標のもと教職員が生徒に寄り添って支援していく教育を実践しています。
 今回の初受賞について、石垣教頭は「団体賞受賞もありがたかったですが、文部科学大臣賞受賞で、生徒たちに『自分たちも頑張れば日本一になれるんだ』という意識が芽生えてきたことを一番うれしく思っています」と感想を語られました。
 また、石垣教頭は石田中の生徒たちの授業への取り組みの「自主性と落ち着き」を学校の特色としてあげられ、「本校では教員と生徒の信頼関係が育まれ、支持的風土が根ざしています」とうれしそうに語ってくれました。

「ほめて認める」ことが大切と語る石垣教頭   身近なところから理科の面白さに気付いてほしいと黒島教諭
「ほめて認める」ことが大切と語る石垣教頭   身近なところから理科の面白さに気付いてほしいと黒島教諭

独自の授業スタイルで深まる学び

 石田中の市村アイデア賞への応募は、理科の黒島教諭が赴任された3年前からスタートしたそうです。コロナ禍で授業が思うようにできないなか、従来の夏休みの自由研究の代わりとして始めたとのことです。「全員に記念品がもらえるということで生徒の意欲もかきたてられるという面もありましたが、身近な問題に目を向けて、生徒それぞれが解決のアイデアを形にするなかで理科の発想にも繋がってくれれば、という思いでした。ただ、個々に指導する時間もありませんでしたし、今回の受賞はとても驚いたというのが正直な気持ちです」と黒島教諭。
 とはいえ、石田中では「教科の共通実践事項」という考え方のもとに、教科ごとに実践プランを作り教員間で実践事項や成果、目標などを共有明確化しています。また、「石田中授業スタイル」というものを掲げ、生徒も授業のなかで、自分の学びを深めています。特に授業最後のゴールデンタイムと呼んでいる時間での「学びの過程を振り返る」「次への新たな問いを持つ」を重視しており、これが石田中の授業の特色となっています。
 お話をうかがっていると、このような日々の体験が市村アイデア賞の応募の中にも確実に生きているように思います。また、石垣教頭が語られた生徒たちの「自主性と落ち着き」もこの石田中授業スタイルの中で育まれているものだと感じました。
 最後に黒島教諭は「『問いを自分で発想する』『自分で進んで学んでいく』というのが教育の目標だと思います。市村アイデア賞の体験を通して、生徒たちがより探究心をもって物事に向かい合ってほしいという思いと、身近な生活を豊かにしていくために科学は大切なんだということに気付いて、将来社会に貢献していってほしいと思っています」と語ってくれました。

校訓が刻まれた石田中学校の校舎の前には素敵な花壇が広がっている
校訓が刻まれた石田中学校の校舎の前には素敵な花壇が広がっている


(取材日 2023年1月27日 沖縄県那覇市)