市村アイデア賞

受賞団体訪問

「福祉の町」で育つ児童の意欲と大人への信頼
第55回(2024年度)努力団体賞 個人賞2作品受賞 那覇市立 石嶺小学校
個人賞受賞者と大村朝彦校長(左端)、教務主任・宮城幸太教諭(右端)。
個人賞受賞者と大村朝彦校長(左端)、教務主任・宮城幸太教諭(右端)。

市村アイデア奨励賞 「スライドおぜん」
自然に食事の作法が身に付くよいアイデア!
「提出が遅くなってしまって、受賞できると思っていなかったのでとても嬉しかったです。弟がご飯の食べ方でお母さんに注意されているのを見て思いつきました。実は別のアイデアがあったのですが、お母さんがこのアイデアを出すように薦めてくれました。将来は医者になりたいと思っていますが、発明で起業するのも面白いかなと思います」(小6)
努力賞 「くつを簡単にきれいに」
玄関にひとつほしい実用的なワンポイントアイデア!
「受賞を聞いたときは、びっくりが先で嬉しさが後からきました。このアイデアは、靴をきれいに揃えられなかったり、うまく脱げなくて転んだりした経験から考えました。アイデアを考えたりするのが好きで、今回のアイデアも以前思いついたものをヒントに形にしました。サッカー部なので、将来はサッカー選手をやりながら副業で発明ができるとよいと思います」(小6)


児童の心が安らぐ環境作り

 第55回市村アイデア賞において、那覇市立石嶺小学校(以下、石嶺小)は初応募で団体賞とふたつの個人賞を受賞されました。
 石嶺小は那覇市の北東部、首里石嶺町に位置する児童数約860名の那覇市内トップの大規模校です。この地域は、那覇市北東部のベッドタウンとして近年急速に発展しており、福祉センターや中央児童相談所、石嶺児童園など福祉関係の施設も多く「福祉の町」とも言われています。
 「本校には、家庭にさまざまな事情を抱えている児童も通っております。そういう児童たちの心が安らぐ環境のなかで、自分たちの可能性にチャレンジできる学校にしたいと考えています。今回の受賞で、本校の児童が自分の身の回りをよく見て、物事を考えていることを感じ大変嬉しく思いました」と大村校長は語ります。
 取材時はちょうど下校の時間でした。大村校長の姿を見かけた児童たちは、みな嬉しそうに「校長先生!」と声をかけて近寄ってきます。その光景は、石嶺小の児童が見守ってくれている大人を信頼し、いかに安心して毎日を過ごしているのかを実感するものでした。


子供たちのことを第一に考えていきたい。と大村校長。   実際に見て手を動かして体験することが大切。と宮城教諭。
子供たちのことを第一に考えていきたい。と大村校長。   実際に見て手を動かして体験することが大切。と宮城教諭。

みんなで団体賞をとりたい!

 今回、石嶺小の初応募を指導されたのは、理科担当の教務主任宮城教諭です。市村アイデア賞の存在を知ったのは昨年度だそうですが、理科担当になった今年度応募を決意されました。宮城教諭が応募を決意した動機は、一昨年度文部科学大臣賞を受賞した那覇市立石田中学校の存在です。「受賞した『目盛りが読みやすいメスシリンダー』を見てその発想に驚きました。児童にも見せたところ、とても感心して自分たちも団体賞をとりたいと言い出したんです」と宮城教諭は嬉しそうに語ります。児童にとって同じ那覇市の学校の受賞は大きな励みと目標になったのです。
 こうして宮城教諭は、改めて6年生を対象に市村アイデア賞へ向けた授業を行いました。しかし、授業では生活のなかから疑問点を見つけ出せず苦労していたそうです。
 先行きを心配していた宮城教諭でしたが、夏休み明けには40数名の児童が応募用紙を提出しました。「市村アイデア賞はほかのコンテストとは違い最初から全国規模です。また審査員も学校の先生ではありません。そういう部分も児童は魅力的に感じて頑張ったのだと思います。小学生の今は知識よりも自分で考えてトライする体験をたくさんしてほしいと思っています。今回の挑戦はそのよい機会になりました」と宮城教諭。
 最後に大村校長は「本校では『自ら課題を見つけ、自ら解決策を』を掲げています。実生活や学習の面でもいろいろな物の見方や考え方があって、常に自分の頭で考えて前向きに生活していける児童が増えていくことを願っています。ぜひ来年もよい賞を取って、児童が盛り上がってくれると嬉しいです」と語ってくれました。

正面玄関広場から見る石嶺小学校。
正面玄関広場から見る石嶺小学校。


(取材日 2025年2月12日 沖縄県那覇市)