市村産業賞

第47回 市村産業賞 貢献賞 -02

揮発性有機化合物とCO2を同時削減する新塗装技術

技術開発者 マツダ株式会社
常務執行役員 菖蒲田 清孝
技術開発者 同社 技術本部 車両技術部
部長 和久 直人
技術開発者 同社 同本部 同 部 塗装技術グループ
マネージャー 篠田 雅史
推  薦 一般社団法人 日本自動車工業会

開発業績の概要

 塗装工場は揮発性有機化合物(VOC)を多く含む塗料を使用し、塗装ブースや乾燥炉で多くのエネルギー(CO2)を消費しており、環境対策は大きな課題である。従来の水性塗装は、水の蒸発などに多くのエネルギーが必要な為にCO2削減と相反し、生産コストと投資の面でも負担が大きい。従って、CO2を増やす事なく経済性にも優れる環境技術の開発が強く求められていた。
 受賞者らは工程革新に継続的に取り組んでおり、2001年に油性スリーウエットオン塗装を開発し、VOCとCO2の同時削減を実現した。今回開発した「アクアテック塗装」は、単なる水性塗料への材料置換ではなくエネルギーと資源効率を追求する技術開発によって、省資源化と超短縮工程を実現した工程革新技術である。(1)高機能塗料による塗膜機能集約:自動車塗膜の発色や耐久性は中塗/ベース/クリアの各塗膜で分担しているが、アクアテック塗装では塗膜の光学/物理特性を解析し、各塗膜での機能分担を再構築する塗膜設計によって高機能ベース/クリアを開発、機能集約を実現した。(2)資源効率を追求した超短縮工程:工程や設備の機能を物理現象に遡って解析し、最少エネルギーで水の蒸発を制御する省エネルギーブース空調や塗膜への熱伝達効率を追求した高効率フラッシュオフなどの工程技術を開発し、エネルギー削減と大幅な工程短縮を実現した。
 開発技術の特徴と効果/実績を以下に記す。
(1)環境:水性塗装に伴うCO2増加をオフセットし、世界最高水準のVOC/CO2排出量を実現。
(2)品質:耐久性は同等以上、且つ、仕上り外観を向上。塗膜設計の技術をカラー開発に応用する事で、ソウルレッドプレミアムメタリックなどの高意匠カラーも塗膜積層数を増やすことなく実現。
(3)経済性:超短縮工程による既存設備の最大活用、油性/水性の混流技術などによりシャットダウンをせずに最小限の投資で既存工場へ導入し、生産コストも削減。
 アクアテック塗装は、優れた環境性能と、お客様への高い提供価値を実現しており、地球環境保全への貢献と共に、日本のものづくりを世界へ発信し国内産業の競争力強化と発展に寄与できると考えている。


図1

図2