市村産業賞

第47回 市村産業賞 貢献賞 -04

可変磁力モータの開発

技術開発者 株式会社 東芝 生産技術センター 制御技術研究センター
研究主幹 新田 勇
技術開発者 同社 同センター 同研究センター
研究主務 前川 佐理
技術開発者 東芝ライフスタイル株式会社 HA 第二事業部技術部
主務 志賀 剛

開発業績の概要

  永久磁石同期モータは、高効率・低騒音の長所により急速に普及している。しかし、磁石による逆起電圧が発生するため、出力範囲が狭い短所も併せ持つ。用途拡大に伴い、車載モータの低速運転と高速運転や、洗濯機における高速回転が必要な脱水と高トルクが必要な洗いなど、同モータには出力範囲が広いこと、かつ高効率であることが求められていた。また適用対象としたドラム式洗濯乾燥機では、さらなる省エネに向け、より水気を絞るため高速回転可能な駆動モータが切望されていた。
 可変磁力モータは、前記磁石の磁化状態を変化させることにより、高トルク出力の場合は永久磁石の磁力を高く、高回転数出力の場合は同磁力を低く、それぞれの出力に合わせて切換を可能とするもので、出力範囲と高効率域を拡大できる。なお、本モータは、新技術の適用により磁化状態の変更に必要な印加電流を大幅に低減し、洗濯機に搭載して世界で初めて実用化した。
・磁化が変わる可変磁石と通常の固定磁石を周方向に隣接させて回転子に配置し、家電機器で供給可能な電流15A で、磁石の磁力を適宜変更可能とする直列型磁気回路構造(図1)。
・モータの回転角度を検知して、瞬時に磁化電流を印加可能とする制御技術。
・洗濯物容量9kg で当時業界最高の脱水時回転数1700rpm を実現した(図2)。
・2009 年11 月発売のドラム式洗濯乾燥機に搭載し、高速脱水でより水気を絞ると共に熱効率改善効果を含め、その後の乾燥消費電力量を20%低減した(洗濯物6kg、洗いから乾燥まで960Wh→760Wh、2010 年度製品で業界最小)。
 本技術は、広い負荷範囲を持つモータ用途に適用可能であり、派生技術を含め特に車載モータなどへの適用が期待される。

図1

図2