市村産業賞

第49回 市村産業賞 功績賞 -02

高画質LCD向けブラックフォトレジストインキの開発

技術開発者 新日鉄住金化学株式会社 機能材料事業部 ディスプレイ材料部
主事 川端 智也
技術開発者 同社 同事業部 同部
主事 金光 明
技術開発者 同社 同事業部 同部
主事 永岡 広徳

開発業績の概要

 ブラックフォトレジストインキ(BKインキ)は、ガラス基板上にμm単位のブラックマトリクスを形成する材料であり、液晶ディスプレイ(LCD)の色表示部材であるカラーフィルターに使用されている(図1)。近年、LCDは液晶テレビおよびモバイル機器などの様々な用途で使用されており、スマートフォンやタブレットの普及に伴い、その機能向上は世界的な注目を浴びている。そのような中、更なる高画質LCDへの要求に拍車が掛かり、より鮮明な画像を表現するための高ppi(pixel per inch)化、広視野角技術である横電界駆動方式(IPS:In Plane Switching)の技術開発が進み、BKインキの性能向上が必要不可欠となっていた。
 BKインキへの要求性能としては、高遮光性、細線形成、高絶縁性が挙げられる。高遮光性及び細線形成は鮮明な画像表示に必要であり、高絶縁性は電圧印加による液晶駆動時の誤作動防止に必要である。性能向上を図る上で、カーボン分散体の開発、並びに、高分子タイプアクリル材料を用いた配合設計技術を組み合わせることで高遮光性、細線形成を達成した。更に、新規に開発したカルド樹脂を用い、高絶縁性を達成した。これら3つの技術を活かし、世界初の高画質LCD用BKインキを実現した。
 本材料は、透過率0.01%の高遮光性、4μm以下のブラックマトリクス細線形成、体積抵抗率1.0×1013Ω・cm以上の高絶縁性を同時に達成する材料であり(図2)、LCDの表示性能向上(鮮明な画像表示・高視野角)に大きく貢献している。特に、スマートフォンに代表される400ppiを超える高画質LCDには必要不可欠な材料として世界中で採用が拡大しており、高画質LCD向けBKインキの当社シェアは75%に達している。
 今後のLCDには医療機器や車載用途として、より鮮明な画像の要求がある他、ヘッドマウントディスプレイに代表される1,000ppi以上の更なる高画質化が開発ステージにあることから、本技術を発展させることでLCD業界発展への貢献が期待できる。

図1

図2