市村産業賞

第49回 市村産業賞 貢献賞 -01

電動パワーステアリングの性能・機能向上による普及率拡大

技術開発者 三菱電機株式会社 姫路製作所 電動パワーステアリング製造部
部長 喜福 隆之
技術開発者 同社 先端技術総合研究所 メカトロニクス技術部
機械運動制御グループ
主席研究員 家造坊 勲
技術開発者 同社 コンポーネント製造技術センター 統合化技術推進部
圧縮機・機電統合開発グループ
主席研究員 伊藤 慎一

開発業績の概要

 三菱電機は、1988年に電動パワーステアリング(EPS:Electric Power Steering)のモータ、コントローラの量産化に世界で初めて成功した。EPSは従来の油圧パワーステアリングに比べて、3〜5%の燃費改善効果とCO2削減効果があるため、普及が進んできた。しかし、車両重量が大きい車へ搭載を拡大するためには、モータの体積と振動騒音の増大を抑えた高出力化開発が必要となる。さらに、車両重量が大きくなると故障時に運転者の人力だけでハンドルを回すことが相当な負担となるため、故障時にもパワーアシストを継続する技術開発が重要となる。
 電磁気技術、製造技術、制御技術を駆使し、小型高出力化・振動騒音低減、および安全性向上を実現するモータ・コントローラを開発し、EPSの普及率を拡大した。振動騒音を抑制し、かつモータ体積当たりの出力を向上する技術によって、同出力で従来比50%の小型化を実現した(図1)。また、モータ駆動系の一部品が故障した場合にパワーアシストを継続する制御を既存ハードウエアのままコスト増なしで構築し、安全性を向上した(図2)。
 本開発技術の特徴を以下に示す。
(1) 磁石の有効磁束を向上する電磁気構造を開発しモータ体積当たりの出力を向上。
(2) モータの磁石形状を最適化、かつ、センサ誤差を補正する制御を開発し振動騒音を低減。
(3) モータ駆動系の故障個所を自動で特定して残りの正常部品でパワーアシストを継続。
 本開発技術により、EPSの適用車種を大幅に拡大でき、普及率拡大(自動車全体の約6割に装着)によりCO2削減に大きく貢献した。また、高い安全要求にも対応しており先進運転支援システムを支える製品として更なる発展が期待される。当社製EPSの世界シェアは現在約20%であり、更なる発展を目指していく。

図1
図2