市村産業賞

第53回 市村産業賞 功績賞 -02

公開型生体認証技術PBIの開発と実用化

技術開発者 株式会社 日立製作所 研究開発グループ
テクノロジーイノベーション統括本部 システムイノベーションセンタ
セキュリティ研究部 主管研究員 高橋 健太

開発業績の概要

1.開発の背景
 デジタル社会は、確実で安全な本人認証なくしては成立しない。インターネットの標準方式である公開鍵認証は、高度な暗号理論により安全性が保証されるが、「秘密鍵」を管理するためICカード等のデバイス所持に加えて、暗証番号やパスワードの記憶も必要とされる。
 一方、所持や記憶が必要ない、便利で確実な生体認証への期待が高まっている。しかし生体情報は取り換えられない個人情報であり、漏洩対策やプライバシ保護が課題であった。
 このため、生体認証と公開鍵認証の長所を兼ね備えた、新たな認証技術が切望されてきた。

2.開発技術の概要
 静脈パターンや顔の特徴など、測定毎に変動する生体情報から秘密鍵を生成し、対となる公開鍵に不可逆変換して、公開鍵認証や電子署名を実現する、公開型生体認証技術 PBI (Public Biometric Infrastructure) を、世界に先駆けて開発、製品化した。
 生体情報や秘密鍵は、認証端末内で変換された後すみやかに破棄され、どこにも保存されず、送信もされない。このため漏洩リスクが最小化され、プライバシも保護される。
 また公開鍵や認証データから元の生体情報を推定したり、偽造することは、計算量的に不可能であることを数学的に証明し、高度なサイバー攻撃に対しても安全性を保証した。

3.開発技術の特徴と効果
 複数の金融機関に導入され、カードやスマートフォンも不要な、手ぶらでのATM取引やキャッシュレス決済として利用が拡大している。認証方式は指静脈認証のほか、顔認証や虹彩認証など、マルチモーダル対応が可能である。本技術はISO規格にも引用され、ニューノーマル時代のデジタル社会、Society 5.0を支える認証基盤として、これからの暮らしをもっと豊かにする。


図1

図2