市村産業賞

第58回 市村産業賞 功績賞 -02

防汚性に優れた水まわり製品を可能にするスルホン酸表面改質技術

技術開発者 TOTO株式会社 技術本部 高分子技術部 樹脂技術第二G
グループリーダー 森井 勇次
技術開発者 同社 同本部 同部
主席技師 篠原 賢次
技術開発者 同社 同本部 同部 樹脂技術第二G
チームリーダー 畑中 啓司

開発業績の概要

1.開発の背景
 水まわりの衛生維持において、有機汚れの堆積や水あかの固着は長年の課題である。従来の撥水技術(シリコーン等)は界面活性剤を含む汚れに弱く、また、一般的な親水技術(水酸基等)は水あか成分と化学結合して強固に固着する問題があった。そこで、高極性でありながら水あかと結合しない「スルホン酸基」に着目、油汚れを浮かせつつ、水あかの固着も抑制するという相反する課題を解決し、洗剤や過度な清掃に頼らずとも、長期間清潔な状態を維持できる画期的なマテリアル技術の開発を目指した。

2.開発技術の概要
  本技術は、スルホン酸基を部材の極表面(数十nm)に高濃度で偏在化・固定化させる独自の表面改質技術である。通常、高極性な官能基は材料内部に潜伏する性質があるが、塗料成分の相溶性を精密に制御し、特殊成分の揮発に伴い表面へ意図的に偏析させる塗料設計を確立した(図1)。さらに、紫外線(UV)硬化プロセスを用いてこの偏析状態を瞬時に固定化することに成功。表面に高い親水性を持たせつつ、塗膜主鎖には緻密な高架橋アクリル骨格を採用することで、水まわりの過酷な環境に耐えうる優れた長期耐久性と、安定した量産性を両立した。

3.開発技術の特徴と効果
 本技術による表面は、水が汚れと基材の間に入り込む「ローリングアップ効果」により、皮脂等の油汚れを水だけで浮き上がらせる(図2)。また、スルホン酸基は水あかと結合しないため、付着した水あかとの化学的固着を防ぎ、軽い力で容易に除去可能である。これにより、清掃時間短縮による家事負担軽減と、洗剤使用量削減による環境負荷低減に大きく貢献する。本技術は浴室床やカウンター等に搭載され、年間数十万台規模で出荷されており、きれいで快適な住生活文化の創造に寄与している。

図1

図2