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1.開発の背景
先天性心疾患では新生児期・幼少期に心臓の欠損孔の閉鎖や血管形成のため手術治療が行われる。手術ではパッチ材料が不可欠であるが、従来の材料は、体内で異物と認識され石灰化などの材料劣化を起こしたり、患者の身体成長に伴いサイズが合わなくなって患部が再狭窄を起こしたりする。結果、患者やその家族にとって心身共に負担の大きい再手術等の治療が繰り返されることが少なくないという深刻な医療課題があった。
2.開発技術の概要
上記の医療課題を解決するために「手術後に患者自身の組織に置き換わることで劣化を防ぎ、かつ身体の成長に追従するパッチ」を開発し、2024年6月に日本で上市した。この世界初のコンセプトの心・血管修復パッチは、体内吸収性のポリ-L乳酸(PLLA)糸と非吸収性のポリエチレンテレフタレート(PET)糸による特殊な編物構造(経編(たてあみ)構造)を吸収性の架橋ゼラチン膜で被覆したハイブリッドシートである。
3.開発技術の特徴と効果
本品は、手術中の縫合や埋植直後は血圧に耐える血管壁として機能するが、その後ゼラチン膜が患者の自己組織に置き換わりながら分解し、次にPLLA糸が徐々に分解され自己組織が成熟する。PLLA糸が分解した後には、PET糸部分が残り伸張可能な骨格構造へと変化し身体成長に追従可能となる。心臓血管壁として十分な強度を持ち、かつ材料劣化抑制と身体成長への追従性を両立したパッチ材である点に最大の独創性がある。
本品により、先天性心疾患患者で生涯繰り返される再手術リスクが低減され、患者とその家族の大きな心身負担の軽減とQOL向上が期待される。また、社会的必要性が高い一方で、患者数が少なく、かつ高度な設計技術が求められるが故に開発への参入がほんどない小児用医療機器分野において、強力な産学官ワンチームで成し遂げた本品開発成果は、子供を救う治療技術革新の先導的な事業化モデルになると考えられる。
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