市村地球環境産業賞

第52回 市村地球環境産業賞 功績賞 -01

アモルファス磁性合金箔による省エネ産業用モータの開発と実用化

事業経営者 株式会社 日立製作所 研究開発グループ 制御イノベーションセンタ
主管研究員 榎本 裕治
技術開発者 株式会社 日立産機システム ドライブシステム事業部 モータ設計部
担当部長 鈴木 利文
技術開発者 同社 空圧システム事業部 ベビコン設計部
主任技師 兼本 喜之
推  薦 一般社団法人 日本電機工業会

開発業績の概要

1.開発の背景
 我が国では、全消費電力の55%がモータ動力であり、その75%、全電力使用量の約1/3が産業分野のモータ動力で消費されている。これら産業用モータでの省エネは、生産工場で使用される用役系モータで大幅な改善余地が残っており、可変速制御やモータ自体の効率改善により電力消費量を大幅に削減可能と推定されている。本開発では、(株)日立産機システムが持つアモルファス磁性合金箔を用いた変圧器のトップランナー規制への対応実績をもとに、モータの鉄心損失低減を目的としてアモルファス磁性合金箔の産業用モータへの適用技術開発を行った。

2.開発技術の概要
 アモルファス磁性合金箔は、非常に薄くて硬く、モータの複雑な形状の磁極に加工する際の特性劣化が著しく、モータ鉄心として使用することが困難であった。本開発では、残留加工応力の少ないせん断加工だけでアモルファス箔を鉄心形状に形成する技術を開発した。また、このせん断加工によって得られた鉄心を効果的に実装することができる薄型のアキシャルギャップ型モータ構造を開発し、モータの国際効率規格の最高レベルであるIE5級の産業用モータを実現した。

3.開発技術の特徴と効果
 開発した高効率な薄型モータをスクロール型圧縮機と一体化することで、これまでのものより大幅に小型で静音、高効率な産業用空気圧縮機を実用化できた。産業用モータ、およびモータ駆動の産業用機器の高効率化は、エネルギー消費量を低減する効果が大きい。開発した技術、製品は、産業用モータ電力使用量の約1/3を占める空気圧縮機に現在適用しているが、工場用役系の水循環用ポンプ、空気循環用ファンや、今後の多様な機器電動化などへも展開できる技術で、大幅なCO2排出量削減に寄与し、SDGsの実現に貢献できる。

図1
図2