市村地球環境産業賞

第54回 市村地球環境産業賞 貢献賞 -02

工場排ガス中CO2の低エネルギー分離回収システムの開発

技術開発者 日鉄エンジニアリング株式会社 環境・エネルギーセクター 計画技術部
マネジャー 萩生 大介
技術開発者 日本製鉄株式会社 先端技術研究所 数理科学研究部
上席主幹研究員 松崎 洋市
技術開発者 公益財団法人 地球環境産業技術研究機構 化学研究グループ
主任研究員 Chowdhury Firoz Alam
推  薦 一般財団法人 エンジニアリング協会

開発業績の概要

1.開発の背景
 発電所や工場等の排ガスは低圧でCO2濃度が低く、その分離回収に多大なエネルギーを要するためこれまで有効利用が進んでいなかった。この課題に対応するため、低エネルギー消費型のCO2分離回収技術の開発に着手した。分離回収方式として大規模回収に経済性があるとされる化学吸収法に着目し、実用化に向けた課題解決に取り組んだ。

2.開発技術の概要
 化学吸収法は、吸収液にCO2を選択的に反応吸収後、加熱してCO2を分離回収する方法。CO2分離に必要な熱エネルギーが回収コストの大部分を占めるため、この熱エネルギーを低減することが開発のポイントとなった。具体的には以下の取り組みを行った。

  エネルギー消費量を大幅に削減可能な新しい化学吸収液の開発
    吸収液に用いるアミン化合物の探索(量子化学計算やケモインフォマティックスも用いた効率的な化合物の絞り込みを実施)と吸収液の組成検討
  回収したCO2を利用に耐え得る品質(不純物濃度)とするための実用化技術の開発
    CO2に同伴する不純物の種類を峻別しこれらを除去する方法を試験確認

3.開発技術の特徴と効果
 開発の結果、以下の特徴を持つCO2分離回収システムを得ることができた。

  熱エネルギー消費量を40%以上(*)削減(ヒートポンプシステムとの組合せでは50%減を達成)
(*)従来の一般的な化学吸収液MEA(モノエタノールアミン)比
  100℃未満の低温での再生を実現 (未利用の低品位排熱利用が可能)
  不純物の多い排ガスに対応(不純物除去のため前処理設備及び後処理設備を付加)

以上のシステムを省エネ型CO2化学吸収プロセス「ESCAP®」として商品化。これまでに2件の商業機を建設し社会実装を開始している。それぞれ製鉄所、石炭火力発電所の排ガスからの食品用途レベルのCO2生産に成功、2件合わせて国内炭酸ガス生産量の約8%に相当する。本技術により今後も国内外のCCUSへ幅広く貢献していきたい。

図1

図2