市村地球環境産業賞

第56回 市村地球環境産業賞 貢献賞 -01

コンクリートの脱炭素化に資するCO2固定型高耐久化混和材

技術開発者 デンカ株式会社 青海工場 青海サステナビリティー推進部
グループリーダー 森 泰一郎
技術開発者 同社 同工場 青海インフラ技術研究部
グループリーダー 樋口 隆行
技術開発者 同社 エラストマー・インフラソリューション部門
インフラソリューション研究部 部長 盛岡 実
推  薦 一般社団法人 日本化学工業協会

開発業績の概要

1.開発の背景
 コンクリートは社会インフラの構築に不可欠な材料だが、その主原料であるセメントは産業界で2番目にCO2排出量が多い。今後、セメント使用量は発展途上国を中心に2050年にかけて1.2倍増加すると言われている中、社会インフラの構築とCO2排出量削減を如何に両立していくかが課題となっている。2016年にパリ協定が発効されるよりも前、コンクリート製造時のCO2排出削減を目指して、当社はCO2を固定化する特長を持つコンクリート用高耐久化混和材を開発した。

2.開発技術の概要
 高耐久化混和材はγ型2CaO・SiO2を主成分とし、短期間の中でCO2と積極的に反応・固定化させることで、化学的に安定した炭酸カルシウムを生成する無機系材料である。コンクリート組織の緻密化が促進され、高強度・高耐久性を実現する。また、高耐久化混和材は、高温焼成時にCO2を排出する石灰石の代わりに化学工場内で発生する副産物の消石灰を原料とすることで、製造時のCO2排出量を大幅に(約80%)削減した。

3.開発技術の特徴と効果
 高耐久化混和材の適用例の一つとして、製造時にCO2を固定化させたCO2固定型コンクリートが挙げられる。CO2固定型コンクリートは、セメントの代替材料として高炉スラグや石炭灰を利用してセメント使用量を大幅に削減し、かつ、コンクリートが固まる過程で、CO2が含まれる排気ガスで養生することで、コンクリートにCO2を固定化する技術である。地球温暖化防止や資源循環型社会に貢献する技術として実用化されており、2020年12月に政府が発表したグリーン成長戦略ではカーボンリサイクルを実用化した事例としてCO2固定型コンクリートの中で取り上げられた。

図1

図2