市村地球環境学術賞

第51回 市村地球環境学術賞 貢献賞 -03

統合的土地・環境管理計画手法の提案・開発及び実践

技術研究者 東京大学 サステイナビリティ学連携研究機構
機構長・特任教授 武内 和彦
推  薦 東京大学

研究業績の概要

 地球温暖化対策と生物多様性や環境保全、地域経済・社会の持続可能な発展等の多様な目的間の相互関係を科学的に明らかにし、両立するシステムを構築するための学理や方法論、実践が求められている。とくに、農村地域は、気候・生態系変動の影響を特に大きく受ける地域であり、気象条件や水資源の変化による直接的な影響のみならず、生態系や生物多様性の変化を介した間接的な影響を受けやすい。
 上記の背景のもと、持続可能な社会を低炭素社会・循環型社会・自然共生社会の3 社会像の統合として捉える「地域循環共生圏」の概念を提唱するとともに、土地利用・植生のフィールド調査や環境影響評価、資源管理などの生態学・環境学の手法、衛星・地上観測データに基づく水理シミュレーションなどの工学的手法、農業生産性分析などの計量経済学の手法、多層・多様なステークホルダーとの協働などの社会学の手法を基盤とする統合的土地・環境管理計画手法を構築した。
 とくに、アジア・アフリカ地域では、森林・農地や居住地が近接しつつ入り組んだモザイク構造を有しており、対策の検討・実施には、環境影響評価のみならず、暮らしや生業、文化や習慣に与える影響を統合的に考慮した統合的土地・環境管理計画手法必要がある。
 本研究は、アジア・アフリカ地域において、地域のコミュニティと協働し、実践的フィールド研究を行うことで、学術的知識と地域での取り組みや内在する知識を統合し、地球温暖化防止に貢献する再生可能エネルギー開発と農林水産業振興との両立を図るシナリオ・戦略策定に大きな貢献を果たした。
 本手法は、今後、気候変動の緩和策と適応策の統合的推進というパリ協定以降の大きな国際的課題に応えるものとして、ますます普及・展開することが期待できる。

図1