市村地球環境学術賞

第54回 市村地球環境学術賞 貢献賞 -01

洋上風力発電所の採算性および耐久性の評価に資する日本型風車ウエイクモデルの開発

技術研究者 九州大学 応用力学研究所
准教授 内田 孝紀
技術研究者 東芝エネルギーシステムズ株式会社
エネルギーシステム技術開発センター
シニアマネジャー 谷山 賀浩
技術研究者 日立造船株式会社 社会インフラ事業本部
グループ長 吉田 忠相
推  薦 九州大学

研究業績の概要

 受賞者は、大規模洋上ウィンドファームの実現に資する風車ウエイク研究の重要性にいち早く着眼し、2014年1月から(株)東芝(現、東芝エネルギーシステムズ(株))と共同研究に着手した。さらに、2015年1月からは日立造船(株)と共同研究を開始した。個別の共同研究を通して、風車ウエイク研究へのより一層の取り組みが重要であるとの議論がなされてきた。日本版大規模洋上ウィンドファームの実現には、大学と複数の企業が産学連携スキームで一丸となり、スピード感をもって風車ウエイク研究を遂行することが重要との判断から、受賞者の声掛けの下、九州大学応用力学研究所、東芝エネルギーシステムズ(株)、日立造船(株)の3者の共同研究がスタートすることになった(2018年4月〜現在)。本共同研究の成果として、受賞者の発案の下、風力事業者が使い易い新しい「CFDポーラスディスク・ウエイクモデル」の開発に成功した。このようなユニークな取り組みは当時の国内の風力発電業界では事例がないことであった。本モデルの予測精度を定量的に検証するため、風車模型を用いた風洞実験に加えて、日立造船(株)が運営する秋田県雄物川風力発電所に設置された大型商用風車(2MW級)の実測データとの比較を行った。具体的には、鉛直ライダー等による最新のリモートセンシング技術による風車ウエイクの実スケール気流場計測を実施し、信頼性の高い検証データベースを構築し、実環境下における本モデルの予測精度の検証を行った。その結果、本ウエイクモデルの有効性が定量的に実証された。一連の研究成果は2021年4月9日(金)に国際ジャーナル「energies」に掲載され、同時にカバーデザインにも選定された。

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