バイオマス資源は地球規模で豊富に存在し、地理的・気候的な制約を受けず、安全かつカーボンニュートラルな資源である。バイオマス資源を最大限に活用することができれば、世界や日本のエネルギー問題の解消に大きく寄与する。
本技術開発は、熱機関を用いずに、高効率かつ分散型で発電可能な革新的なバイオマス発電技術の実用化を目指す。具体的には京都大学で開発された湿式ケミカルルーピング技術に基づき、バナジルイオンを含む水溶液とバイオマスを反応させ化学エネルギーを変換した後、電気化学セル用いて効率的に電力に変換する。燃焼を伴わず、約200℃という低温下で反応が進行するため、高効率かつ小型化が可能で、また含水率70%までの湿潤系バイオマスを事前乾燥なく投入できる。さらに、このプロセスの副産物として純度99.9%以上のCO2を取り出すことができる。
本技術により、従来は経済的活用が困難だった湿潤・分散型のバイオマスからも採算性のある発電が可能となる。高効率(45〜65%)な発電性能を備えつつ、 CO2の高純度回収も可能な点が特長で、食品・飲料工場や農業現場、水処理施設など、従来未利用だったバイオマス資源から新たな価値創出を実現する。このバイオマス発電プラントの実用化により、①バイオマスを用いた再生可能エネルギーの供給と、②バイオマスが大気から吸収した CO2を回収・除去することによるネガティブエミッションにより、発電量あたりのCO2削減量は 1.6t-CO2/MWhであり、同社上場予定の2032年までには年間約18万tのCO2削減を見込む。
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