第108回新技術開発助成で完了認定を受けている、書換え不可(Write-Once)の記録済み静止画像を表示する「導光板型ホログラムの量産化技術開発」において、事業化を進める中で、顧客から「動画像を表示できるようにしてほしい」という要望を受け、新たに動画像を任意の奥行き位置に表示可能なデバイスの基本原理を発明した。その原理試作品に対して、高い関心と引き合いを得たが、実用化に向けては高画質化をはじめとする改良開発が必要な段階である。 本技術は、2種類のホログラフィック光学素子(In-HOEおよびOut-HOE)を1枚の導光板(ガラスやプラスチックなど)に配置し、In-HOEから入力された映像情報をOut-HOEから出力するデバイスであり、各HOEに機能を付与することで、任意の奥行き位置に像表示できることが特徴である。特に導光板内の伝搬光が平行光となるように、In-HOEに入射する映像を最適化して調整・配置することが、本技術の重要なポイントである。 透明板を用いて任意の奥行き位置にフルカラー動画を表示できるディスプレイは、幅広い分野で応用が可能であり、多様な価値を提供できる。例えば、車載用ヘッドアップディスプレイ分野では、視点や焦点を移動させることなく運転に必要な情報を認識できるため、運転者の疲労軽減や運転安全性の向上、事故防止に寄与する。また非接触型のインターフェースとして、医療や飲食業界、決済システムなどへの活用により、衛生面の向上や感染症防止に貢献できる。さらに博物館や科学館、美術館、水族館などでは、展示物の見え方を損なうことなく、付加情報を提供する解説表示が可能となる。
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