大型犬などに特有の股関節疾患の根本治療に供する動物用人工股関節に関わり、独自の設計思想をベースとして、脱臼しにくく長期安定性を確保でき、さらに埋入手術の簡易化を目指した新しい人工股関節カップと骨頭・ステムに関する新技術開発である。
具体的にはまず、脱臼しにくい超半球カップを採用(図1a 左)、カップ側面は円錐状とし(図1b 左)寛骨臼内での接触面積を増やすことで確実な固定を狙うとともに、カップ素材を強度と潤滑性のあるPEEK樹脂単体とすることでライナーレス化(図1b 右)し、さらにPEEK樹脂円錐カップ側面にTi製スリーブを組み込み(図2a)、骨誘導効果による長期安定性を確保する。骨頭ネック径(図2b)の最適化により旋回角も確保する。ステムについては、前述のTi製スリーブと同様に表面凹凸・テクスチャーの成型方法の選定・適正化を図るとともに、大腿骨内での確実な固定のためにステム上部に独自の形状(顎部)と先端に弾性開口部を設け(図2c)、手術時間の低減と早期の骨癒合を目指している。このように、寛骨臼が小さい動物用の人工股関節に関して、検討と工夫を重ねた結果、当該円錐状カップの設計思想を見出し、材質変更・部品点数削減による製造コスト低減に加え、カップの圧入による確実な固定を図り埋入手術の簡易化・時間短縮も期待できる。
犬猫は現在国内では1500万匹と言われ、単なるペットではなく家族の一員となっている一方で、特に大型犬では股関節疾患が多発しており、人工股関節への置換手術の低廉化と普及は喫緊の課題であり、市場の成長も見込まれる。飼い主がペットの歩行機能を確保し、長年に亘り一緒に散歩できることは健康寿命の伸展に寄与できると考えられる。また、本動物用人工股関節の設計思想はヒトにも応用できる可能性があり、本新技術開発を通しての将来展開が期待される。
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