新技術開発助成

第117回新技術開発-12

吸入物質肺毒性の動物試験代替に資するHiTRAM 細胞の開発

技 術 開 発
契 約 者
HiLung 株式会社
代表取締役 山本 佑樹
所 在 地
京都府京都市
技   術
所 有 者
HiLung 株式会社
技   術
開 発 者
HiLung 株式会社
細胞エンジニアリング部門長 長田 翔伍

技術開発内容

 解体現場におけるアスベスト、タイヤやブレーキパッド由来の摩耗微粒子、大気中の黄砂やPM2.5など、吸入時の肺に対する影響(吸入毒性)がクローズアップされている。また、カーボンナノチューブなどのナノマテリアルは、アスベストと同様の吸入毒性を示すリスクが指摘されており、上市前に厳格な吸入毒性試験が求められている(例えば、ISO/TR10929)。一方で、吸入毒性試験は、従来、マウス等の実験動物を用いて行われてきたが、実験動物削減の潮流やヒト・実験動物間の種差によるリスク判定の予測困難さ、試験に要する時間とコストにより、「ヒト肺細胞」を用いた試験の必要性が高まっている(例えば、2026年6月1日にEuropean Commissionより発出された「Roadmap towards phasing out animal testing」)。
 本技術開発では、肺に侵入する有害物質に対して免疫応答を誘導する「組織常在性肺胞マクロファージ」を吸入毒性試験に利用することを目指す。当該マクロファージは、遺伝子改変を伴わず培養増殖させるのが極めて困難で、吸入毒性試験用に大量に供給することができない。当該マクロファージをガン化させる又は不死化させることで大量供給する技術もあり得るが、通常のマクロファージと比較して機能が大きく異なることから、高い生体模倣性が必要な吸入毒性試験には適さない。そこで本技術開発は、図1のステップによりiPS細胞を分化させることで当該マクロファージ(ヒトiPS細胞由来組織常在性肺胞マクロファージ:HiTRAM)を作製し、吸入毒性試験系に利用することを検討する。
 本技術開発により、実験動物を伴わない吸入毒性試験を提供できるようになる。ひいては、新規ナノマテリアルや医薬品・農薬等の吸入毒性試験を要する製品開発サイクルの加速が可能となる。また、大気汚染・環境物質の肺毒性リスクの早期特定・排除が実現され、吸入物質が原因となる多くの疾患に対して「治療から予防」のパラダイムシフトが期待される。

図