がんは依然として我が国における主要な死亡原因であり、高齢化の進展に伴い患者数の増加も予想されることから、抗がん剤をはじめとする新規治療薬の開発は極めて重要な社会的課題である。また、近年では分子標的薬や免疫療法など治療法の多様化が進んでおり、それらの有効性や作用機序をより正確に評価するための薬理評価技術の高度化が強く求められている。従来の薬理評価では、腫瘍モデル動物の組織の二次元断面に基づく解析が主流であるが、腫瘍の立体構造や細胞間相互作用、血管網、免疫細胞の浸潤状況といった腫瘍微小環境を十分に評価できないという課題がある。そのため、薬剤の効果や作用機序を正確に把握することが難しく、創薬研究の効率化や評価精度の向上を阻害する要因の一つとなっている。本提案は、全細胞透明化技術、染色技術、および高速化した光シート顕微鏡技術を開発・統合することで、がん組織の実用的な三次元解析を実現し、薬理評価の高度化を目指すものである(図1)。特に、従来法では観察が困難であった大規模組織内部の構造や細胞分布を高解像度かつ高速に可視化することで、薬剤投与による組織レベルでの変化を網羅的に解析できる点に大きな特徴がある。
本技術の効果として、従来の二次元断面解析では把握が困難であった腫瘍の三次元構造や微小環境を高精度に評価することが可能となり、抗がん剤をはじめとする治療薬の薬効評価および作用機序解析の高度化が期待される。また、創薬研究における候補薬剤の選定精度向上や前臨床試験の効率化、開発期間の短縮、研究開発コストの低減への貢献が期待できる。さらに、創薬分野のみならず、病理診断や個別化医療への応用も期待されることから、患者ごとに最適な治療法を選択するための基盤技術としての発展も見込まれる。加えて、動物実験数の削減や研究開発の効率化にも寄与することが期待され、医療・創薬産業への波及効果は大きい。以上より、本提案はがん医療の発展および患者予後の改善に資する社会的意義の高い取り組みであり、その実用化による社会的価値は大きいと評価できる。
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